皆様いかがお過ごしでしょうか。2013年もあとわずか。2014年が皆様にとって最良の年となることを祈っております。
さて、ご報告が遅れましたが、私は11月14日、メキシコ取材を終えて帰国しました。前回のアフリカのチャドへの空の旅も長かったですが、こちらもヒューストンでメキシコ・オアハカ行きの便に乗り換えるため、かなり長時間のフライトでした。そのメキシコでは、10月31日から11月2日まで行われる「死者の日」を撮ってきました。日本のお盆のようなもので、帰ってくる死者を迎える祭りです。祖先信仰をしていた先住民の文化とキリスト教文化の混じったものといわれていますが、「死者」を間近に感じるためか、町のあちこち、家の中にもガイコツ人形やドクロ面が飾られ、とても陽気で明るいことに驚きました。死者の日で有名なオアハカ州は、先住民の比率が40%といわれ、周辺の小さな町でもそれぞれの民族衣装をはおって髪を編んだ女性、ソンブレロ(ツバ広帽子)をかぶった男性をよく見ました。白人征服者たちは先住民の宗教的建物を壊し、その上にキリスト教会を建てた訳ですが、その漆喰がはがれたところからは幾何学模様的なインディオ文化の痕跡がのぞいているように、彼らは先住民もその文化も根絶することはできなかったのです。日本のアイヌ文化やオーストラリアのアボリジニ文化についてもそれと同じことなのかもしれません。
この報告は現在、毎日新聞金曜日朝刊で連載中の「その先の世界へ」の5回目(12月13日)でもしたいと思います。
また、昨日、配本された「小さなかがやき」(谷川俊太郎さんとの共著。偕成社刊。1365円)も書店でぜひ、手にとっていただけるとうれしいです。エルサルバドル、アフガニスタンから、コソボ、アマゾン、シルクロードと私の思い入れが強い写真と谷川さんの詩とのコラボです。写真と詩が響き合った本に仕上がったと思います。
間もなくやってくる2014年がどんな年になるのか。未来は、「いま」の積み重ねの上にしか築けません。その「今」という一瞬を切り取るのが写真だと思います。その一枚が「新しい未来」を照らし出せるような一枚を撮りたいと強く願っています。
では、よい年末年始をお過ごしください。
2013年12月4日 長倉洋海
死は間近にある
死者を囲んで、話がはずむ
市場でお墓に捧げる花を買ったサポテクの女性