7、8月とかつてない暑さの夏を、皆様はどう過ごしになられましたでしょうか。私の方は、暑さにぐったりしながらも、写真絵本「アフガニスタンの少女マジャミン」(新日本出版社)の製作と平凡社新書「私のフォトジャーナリズム」の原稿書きに取り組んでおりました。その甲斐あって、「アフガニスタンの少女マジャミン」は9月初めに印刷が終わり、9月29日に発売されることになりました。新書は入稿が終わり、現在、再校(原稿箇所のゲラ刷りの二回目)を待っているところで、発売日は11月15日に決まりました。使用写真は約57枚ほど。本が小さなサイズなので、できるだけ写真を1ページ大の断ち落としや2ページにわたる見開きにするなど、大きく見えるように工夫しております。私の30年間をぐっと濃縮した一冊ですので、書店で手にとっていただけると大変うれしく思います。

 長く取材してきたマスードが倒れて、9年。今年9月9日に行われたパンシールでの法要には1万2千人が集まり、マスードを偲んだという知らせがありました。来年で10年がたとうとしていますが、マスードが逝ってしまったことがいまだに実感できません。マスードのかつての同志であり、山の学校支援の活動を助けてくれたパンシールの長老、サーズディンが昨年、亡くなり、今年、墓参りを済ませたばかりだというのに、今度は山の学校の校長サフダルが38歳の若さで急死しました。 悲しいニュースが続きましたが、三人とも私の心の中でいまも生き続けています。

 遠くに旅立った人がいる一方で、新たに生まれて来た命があります。「山の学校」には、たくさんの子どもたちが今日も元気に登校、一生懸命に勉強を続けています。そんな子どもたちの姿に、マスードやサーズディン、サフダル、そして、地域の人々の託した夢が重なります。写真集「アフガニスタンの少女マジャミン」からも、人々の思いの一端を感じてもらえるのではないかと思っています。

 私は間もなく、次なる取材に向かいます。その旅で、いままでとは違う、「新しい写真」が撮ることができればと念じております。来年春には、グリーンランドとこれから訪れるカピンガマランギ島を題材にした「北の島」「南の島」の二つの写真集を出します。その写真展は五月頃に予定しています。いつか、どこかで、また皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

     2010年9月16日、やっと秋の声が聞こえたきた東京で
                                  長倉洋海