アフガン情勢に関する緊急メッセージ
2021年9月7日


「緊急メッセージ9」

 「山の学校」についてのいくつかの最新情報が入りました。パンシールの中心部、バザラックの町はタリバンに制圧されましたが、タリバンはポーランデ川を遡ってきてはおらず、学校の生徒たちは無事です。校長のヤシン先生は地域防衛のために銃を取り、グループの司令官としてタリバンを迎え撃つつもりです。2002年、私を山の学校に案内してくれた故サフダル校長はかつてマスードの下で侵攻したソ連軍と戦ったイスラム戦士でした。しかし、マスードが彼に教員免状があるのを知り「あなたは故郷に戻って子どもたちに教えなさい」と言われてポーランデに戻った人でした。その後継者であるヤシンはいま、黒板に書くチョークではなく、銃を取る決意をしたのです。この状況下では、故郷を守るためにそうせざるを得ないのかもしれません。子どもたちは不安で怯えていると思いますが、「魂を売り渡さず、信条を貫く生き方」も子どもに何かを教えることができるのかもしれません。
 パキスタン空軍機の連日の攻撃に山にこもった抵抗戦線の兵士からの声をボスメールで聞きました。食べ物もなく睡眠も満足に取れていないようです。それでも、彼らが身を挺して戦うことでアフガニスタンに変化が表れています。カブールをはじめとして、西のヘラート、南のガズニなど各地でタリバンへの抗議運動が起きています。アフマドの「立ち上がってください」というメッセージに応えるように、各地で人々が反タリバンの声を上げています。監視の目をくぐり抜けながら、自然発生的にデモが起き、人々が「パンシールは私たちの国土だ。パキスタンは出ていけ」と叫んでいるのです。女性も子どもたちもいます。そうした映像はツイッターで「@Panjshir」と入れるたくさん流れてきます。私はそれを目にするたびに胸が熱くなります。日本のメディアはそれを報じることはありません。「アラブの春」ではたくさんの市民の映像が流れたのに、と思うと悔しくなります。
 メディアが伝えないものがもう一つ。タリバン内部での抗争です。指導者の1人ブラダルが撃たれパキスタンの病院に搬送されたと韓国の中央日報が報じています。タリバンがパンシール制圧を発表した夜、「銃が祝砲代わりに撃たれ、70人が死亡」というニュースも、実はグループ間の銃撃戦だったというのです。指導者の負傷と銃撃戦は未確認情報ですが、人事をめぐる対立があって組閣が遅れていることはタリバン側が認めています。
 タリバンの政権樹立が進まない中、衝撃的な写真がパンシールから届きました。撃墜されたパキスタン軍の戦闘機の写真です。パキスタンの国旗が尾翼にはっきりと見えます。これは国際法を犯している決定的な証拠だと思います。イランとタジキスタンも「パンシールへの攻撃」に対して強く抗議の声を上げています。日本も情報を掴んでいるはずですから、非難の声をあげるべきです。米国ワシントンやロンドンで、無差別爆撃への抗議デモが始まりました。私たちは何ができるのでしょうか。

   2021年9月7日      長倉洋海

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女性たちが「パキスタンは出て行け。自由を、自由を!」と叫んでいます。


「私たちは数日間、食べ物を口にしていない。睡眠も満足に取れていない。それでもタリバンを食い止めるために戦うつもりだ」(洞窟の抵抗戦線の兵士)


山岳地帯でパトウ(礼拝に使ったり毛布にもする)をまとったアフマド。


「あなたは私たちの国を売らなかった。あなたのお父さんは赤い兵士(赤軍)と戦った。そしてあなたは今「黒い兵士」(タリバン)と戦っている。あなたは(留学先だった)このロンドンで住むことができたのに、この道を選んだ。それは「英雄」への道だ」(ジャザッカ・アラー)


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