「緊急メッセージ8」
「今日は少しでもいいニュースがありますように」と、朝起きるとPCで情報をチェックする。昨日は「世界は見殺しにしている」というSNSを紹介したが、今朝は、ジャーナリストでアフマドのスポークスマンを務めるファヒーム・ダシュティと戦士ウドゥートがパキスタン軍の空爆で亡くなったという情報を見つけた。どちらもよく知っていたのでショックだった。
北のマザリシャリフの飛行場ではパキスタン空軍機が発着しているという。そこからパンシールを空爆するに違いない。「そこまで公然とやるのか」と怒りがこみ上げる。ダシュティはパキスタン人タリバンの捕虜のインタビューの最中に爆撃を受けたとの情報があるから、捕虜が何か発信装置を持っていたのかもしれない。タリバンは捕虜となった仲間を一緒に吹き飛ばしても何の痛みも感じないのだろうか。
一方、首都カブールではパンシール出身というだけで若者200人以上が逮捕されたというニュースが流れてきた。地方では、ハザラ人の妊娠中の元女性警官が残酷に殺された。被害者の息子は、犯人はアラビア語をしゃべっていたと証言している。「アフガニスタンは自分たちの国だ」と考える過激なパシュートゥン人が、全国でタジクやハザラへのエスニック・クレンジング(民族浄化)を始める可能性もある。
マスードが夢見た「さまざまな民族が暮らす、多様性に満ちた国」アフガニスタン。それを、タリバンという他の存在を許さない単一色に染めようとしているようだ。パンシールの抵抗戦線のリーダー、アフマドが「戦いで民間人がたくさん死傷している。停戦を申し込みたい」と提案しているが、タリバンは返答していない。
最新のアフマドのメッセージが、たった今YouTubeに上がった。(6日19時)
『タリバンが停戦に応じないなら、私は降伏することなく各地の抵抗勢力と歩調を合わせ、タリバンと戦っていく。私にはアフガニスタンを解放する責任がある。昨日は親類や友人を亡くした。それでも、国のために血を流すことは私たちの誇りです。大変だけれど、国を解放するために立ち上がってください、声を出してください、あらゆるところで立ち上がってください。世界の支援は得られていないけれど、私は命ある限り戦います。』
というものだった。(英文メッセージはこちら⇒Page1, Page2, Page3)
ソ連軍の大攻勢の際も、下の町は取られても山でゲリラ戦を続け、最後にはソ連軍を追い出した父マスードの戦略を踏襲するつもりなのだろう。
現在、パンシールの人々は苦境に追い込まれているが、その責任は、声をあげない世界各国、そして、対ISのためにタリバンと協調している米国にある。これも20年前と同じ構造だ。
しかし、この「闇の時代」もいつかは終わるはずだ。人は生まれ死んでいくが、次の世代に伝えられていくものが必ずあるはずだ。それは未来への芽。それが顔を出すまで私はアフガニスタンを見続ける。
2021年9月6日 長倉洋海
<参考情報>
「臨月の女性警官の顔をめちゃくちゃになるまで殴打…家族の前で銃撃つタリバン」
ファヒーム・ダシュティ。一緒に日比谷の松本楼で食事をしたことも。
彼に捧げられた献辞:
Rest in Peace, Fahim.
You died as a hero.
You died fighting with dignity for your homeland Panjshir.
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