アフガン情勢に関するメッセージ
2023年5月5日


「今日のメッセージ 2023/5/5」

 皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。私は取材の準備が整い、これから海外取材に出かけます。撮影を終え帰国する5月末まで、「アフガニスタン情勢に関するメッセージ」をお休みさせていただきます。

 やっと家の庭の桜の蕾は少しずつ開き始めました。北海道釧路の遅い春です。アフガニスタンのパンシール渓谷でも木々に緑が戻り、春の訪れを告げています。

〈釧路の自宅の桜〉

〈パンシール渓谷、雪解け水が流れる春。ツイッターより〉

 春は来ましたが、依然、タリバンの支配は続いています。これまで、女子の高等教育、女性の労働が禁止されたままであり、国民の声を聞くために選挙を行なう気配すらありません。国際世論の声を無視したまま、「自分たちだけの国造り」に邁進しています。
 その統治が引き起こした食料不足、経済不安、治安悪化、テロの頻発という危機が国民を苦しめ続けています。国連のグテーレス事務総長は「今世紀最大の人道危機」という表現を使って世界各国に関心を持って欲しいと発言。国民抵抗戦線を率いるアフマッド・マスードは、ウィーンでの反タリバン勢力の会議に参加し、その直後には国連主催のドーハ会議にも参加してアフガニスタンのあるべき姿を訴えました。ウィーン会議のあったオーストリアでは、議会議員たちがタリバンの本質とテロ輸出の危険性に目を向けるようになりました。

〈会談を終えた国民抵抗戦線のアフマッドとオーストリア議会メンバー。ツイッターより〉

 国際情勢は好転しつつありますが、すぐには大きな変革は見込めません。なぜなら、イラン、パキスタン、ロシア、中国などの周辺国がアフガニスタン国民のことよりも、地域の政治的安定や自国権益を第一に考えてタリバンの統治を認め、それを助けるような行動をとっているからです。その中でも、撤退を進めるためにタリバンに権力と武器を渡し、現在も毎週、多額の米ドルを送金している米国はタリバンの暴力的な統治を支えていると言わざるを得ません。
 国民のことを第一に考え、選挙で国民の声を聞こうしたマスードは亡くなってしまいましたが、彼の思想、言葉はさまざまな形で、人々に心に残っています。オーストラリアの大学で教鞭をとるナシール・アンデシャ氏は、私の写真集「MASSOUD」の1ページを添付して自分のツイッターに投稿しています。マスードの思いは息子のアフマッドだけでなく、今も「アフガニスタンを抑圧から解放させたい」と願う多くの人々の心に強く宿っています。

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 「これからも、アフガニスタンの未来と子どもたちのことを考え行動する人たちの姿をお知らせしていきたい」と思いながら、取材の旅に出ます。


       2023年5月5日  長倉洋海





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