アフガン情勢に関するメッセージ
2023年4月12日


「今日のメッセージ 2023/4/12」

 3月29日付の当メッセージでPen path(鉛筆が拓く道)代表のマティウラ・ウィサが逮捕されたことをお伝えし、それから二週間ほど経つが、彼は未だ釈放されていない。

〈子どもたちとウィサ。ツイッターより〉
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 アフガン女性指導者評議会メンバーのナルゲス・サダトも逮捕されてから20日以上がたつ。病院に通う途中で逮捕され、「拘置所では治療を受けさせてもらえないばかりか拷問を受けている」と、『抗議する女性運動』のメンバーがAmu TVに語っている。(ツイートを表示
 ジャーナリストへの迫害も止まることがない。Hashut Subh Daily紙は「タリバンが北部バクラン州で、3人のジャーナリストを逮捕した」と伝えた。その翌日、彼らは、「これ以降、タリバンを批判しないと誓約書に書かされ釈放された」と同じジャーナリストのNatiq Malikzadaが投稿している。
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 また、YouTubeチャンネルのレポーター、ニロファル・ラフファニが路上で収録中に同僚2人と逮捕されたと、woman's aid foundation のヤフタリ氏が投稿している。

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 拘留されても、暴行を受けても、再び街頭に立ちデモを行なう女性活動家、そして街頭で取材活動を続けるジャーナリストやレポーターたち。彼らは逮捕を恐れていない訳ではない。家族や生活のことを思えば二の足を踏むに違いない。恐怖心も抱くだろう。それでも、変えなければならない、伝えなければならない、という使命感が彼らを支えている。彼らの勇気ある行動がこの国の現実を伝える大切な「光」の一つだと思う。

 文化人や知識人への弾圧や屈辱も続いている。アフガニスタン国際ニュースは場所と日時は明らかにしていないが、後ろ手に縛られ首から楽器を下げさせられた音楽家2人が、見せしめとして街中を歩かせられる映像を配信している。

〈首から楽器を下げさせられ、歩かされる音楽家たち。ツイッターより〉

 他にもタリバン批判をした大学教授や、反タリバンの嫌疑をかけられ逮捕されて目隠し状態で自白を強要されている学校校長の映像もツイッターで公開されている。真実を覆い隠し、人々を「恐怖」で押さえつけようとする意図が透けて見える。
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 それでも、ジャーナリストは伝える。BBC Newsが、国連の食糧支援の最前線で働く3300人の女性職員にタリバンの「労働禁止命令」が出されたと伝えている。 
女性職員は自宅待機のままだが、彼女たちが食糧不足に喘ぐ9割の国民に食料や生活必要物資を届けてきた。彼女たちがいなければ誰が、その役割を担うのか。(ツイートを表示
英国の国連大使も、タリバンの今回の決定を強く批難している。届けるものがあるのにそれが届けられない・・。アフガニスタンの苦難は人災でもある。(ツイートを表示

 タリバンのメディアやジャーナリストへの弾圧の中で、アフガニスタン国際ニュースが重大な事実を明るみにした。「タリバン最高指導者アクンザダ師の事務所に1年の経費として40億アフガニー(1アフガニーは約2円)が使われている一方、地方行政には1億4千万アフガニーしか充てられていない」という記事を、その証拠書類と共に配信したのだ。国民のためよりも、自分たちのためにお金を使う。タリバンの一面がさらけ出されている。
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 アフガニスタンの人々が食料不足で苦しんでいるのに、食料を焼く映像をツイッターで見つけて驚いた。場所は隣国パキスタン。自分たちの独立圏を求めて政府軍と戦闘を繰り広げているTTP(パキスタン・タリバン運動)のメンバーが食料を運ぶ車を止め、中のビスケットなどに火をつけているのだ。ツイッターでは「テロリストがアフガン訛りのパシュトゥー語で“次は車両も燃やす”と話していると言っている」という説明がついていた。その映像は彼らのメンバーが戦果を誇る目的で撮り投稿したもののようだが、愚かで心無い行為に胸が塞がれる思いだ。

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 かつてアフガニスタン政府を転覆させるためにタリバンを支援してきたパキスタン。パキスタンがいかにタリバンに自爆テロの訓練をしてアフガン国内に送り出してきたかを、タリバンの強硬派ハッカニグループの幹部が外国メディアに語るインタビューもあった。その中で、「自分たちはパキスタン軍に自爆攻撃の訓練を受け米国人を殺すために送り込まれた」と語っている。隣国を恐怖に陥れるという因果が巡り巡って自分たちのところに戻ってきている。因果応報という言葉を思い出した。
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 タリバンもTTPも、テロを悪いとは全く思っていない。それはつい最近、タリバン広報官が「IS(イスラム国)のテロ活動は自分たちが行ってきた活動の100分の1にも満たない」と自慢げに語っていた様子を見ても明らかだ。

 タリバンが引き起こすさまざまな災害。それを一番に悲しみ、苦しみ、嘆いているのはアフガニスタン国民だ。誰もが一刻も早く地獄のような日々から解放されたいと願っているはずだ。そんな気持ちを象徴するような投稿映像を見つけた。それがいつ撮られたものかは明確ではないが、今、この映像に思いを托す人がいるのは間違いないようだ。
 タリバンの苛烈な迫害に苦しむパンシール。その渓谷の風景の中で、1人の女性が道でリズミカルに鳥のように、蝶のように、軽やかに舞い踊っている。一度は手にした「自由への翼」。それがもぎ取られても、彼女の羽ばたこうとする渇望はなくならない。いつも飛び立つことを夢見ている。
いつか飛び立とうするとき、目の前の石などの障害物を取り除く一助になるような支援をしていきたいと願う。彼女が、そして、人々が大空に飛び立てる日を、私も夢見ている。

   2023年4月12日  長倉洋海


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