「今日のメッセージ 2023/3/22」
今日もアフガニスタンからはさまざまなニュースが流れてくるが、どれも辛く悲しいものばかりだ。
パンシール州では14歳の少年が殺された(AmuTV)。 (ツイートを表示)
西のヘラートでは、女性の78キロ以上の移動はムハッラム(家族・親族などの男性同行者)なしには許されないと、ヘラートのタリバン指導者が宣言した(アフガニスタン国際ニュース)。 (ツイートを表示)
パラワン州ではジャーナリストが拘束された(Hashte Subh Daily)。 (ツイートを表示)
イランからは、アフガン移民が逮捕され、鎖で繋がれて強制送還される映像があった(アフガニスタン国際ニュース)。 (ツイートを表示)
4人の子を雨降る路上に寝かせ物乞いする女性の姿もあった(Panjshir Province)。 (ツイートを表示)
ただ一つ、心が和んだのは新年(ナウ・ルーズ)の祝いで踊る女の子の映像だけだっただが、この祝いもタリバンによって昨年来禁止されているが、人々の生活と心に刻まれた伝統を消すことはできないだろう。
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国民がタリバンの圧政に苦しんでいる中、またぞろ過去の魑魅魍魎たちが自分の出番を求めて政治の表舞台に登場してきたことを知り、胸が悪くなった。
かつてソビエト軍に協力し、マスードが優勢となるとそちらに加わり、政権樹立後には、権力奪取のために首都を爆撃したドスタム将軍(カルザイ政権下で副大統領・元帥となった)。
タリバン伸長後、拠点を失ってマスードの元に避難し、支援を受けてのちにバルフ州知事になったアタ・モハマッド・ヌールは、再びタリバンがバルフに迫ると、「自分は退くことなく死ぬまで戦う」と言いながらいち早くウズベキスタンに逃げ出した。
この2人が国民抵抗評議会を結成したという。アタ・ヌールはSNSを使ってNRFリーダーであるアフマッド・マスードを誹謗している。タリバンに抗するために団結するのではなく、その分断を図っているとしか思えない。
〈写真中央がアタ・ヌール。その左がドスタム元帥。ツイッターより〉
マスードだったら、国を考え、そんな2人も取り込むことができたかもしれないが、私は小人なので、彼らの醜さを目の当たりにしてため息をつくばかりだ。
そんな時、実家の庭で、雪が溶けたばかりの地面で花を咲かせた福寿草と芽を出した蕗の薹(フキノトウ)を見つけた。今年も春を感じ、大地から芽を出し、花を咲かせる。明るい陽が差したような気持ちになった。植物たちは人間と違って、嘘をついたり、簡単に裏切ったりしない。誰にも迷惑をかけず、静かに陽を浴び、命を繋いで行く。その清々しさが美しい花となっているのだろう。
アフガニスタンでも、やっと雪が溶け始め、アンズが花を咲かせようとしている頃だ。人々は苦難の中でも、花や木々に春の訪れを見つけ、一瞬でも心の安らぎを感じているに違いない。
〈満開の花を咲かせたポーランデ渓谷の杏。撮影:長倉洋海〉
〈杏の花を楽しむ?ポーランデ渓谷。撮影:長倉洋海〉
地面を見れば植物が芽を出し、空を見上げれば満開の杏。タリバンの権力奪取でたくさんの人たちが祖国アフガニスタンを離れたが、いま異国の地で何を思っているだろうか。かの地で花々を見るたびに故郷の光景を思い出していることだろう。
難民といえば、2015年、マスード廟を訪れていた一家のことが忘れられない。家族は避難先だったイランから故郷のヘラートに戻った直後に、遠路をマスードの墓に詣でるためにやってきたのだった。
一家の男性は「以前、戦士としてマスードと一緒に戦っていました。イランに逃れてからは辛いことがたくさんありました。しかし、自分の生まれたところで、土に還ろうと決心してアフガニスタンに戻ってきました」と語った。自分が育ち、祖先の思いが宿っている地を忘れることはできなかったのだろう。
タリバンが武力で人々の故郷を奪うことができても、彼らの精神は生まれた地を離れることはない。人々のそんな思いは根絶やしにできないもの。それこそがアフガニスタン再建の大きな礎になる。
2023年3月22日 長倉洋海
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