「今日のメッセージ 2023/3/14」
3月8日は「国際女性デー」だった。アフガニスタンの首都カブールでは「女性たちがタリバン政権下のジェンダー・アパルトヘイトに抗議し、パン、仕事、正義、自由、教育の権利などのスローガンを叫びながら、路上を行進した」とパンシール・プロヴィンスが動画を投稿している。
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女性活動家のアミリ・ワヒダは、「世界の女性たちよ、アフガニスタンの女性の側に立って。私たちを孤立させないで」と訴える女性たちの様子を投稿している。(ツイートを表示)
そうした叫びに耳を貸すこともなく、タリバンの蛮行は続いている。国際人権団体アムネスティー・インターナショナルが「タリバンによる女性とその娘たちへの恐ろしい集団レイプが明らかになった。タリバンは透明で公正な調査を直ちに開始すべき」と声明を発表した。(ツイートを表示)
〈「タリバン壊滅」と書いた紙片を路上で掲げる女性。ツイッターより〉
道義を弁えず、理性も持ち合わせていないタリバンに「人間としての尊厳」を踏みにじられるアフガン女性たち。国民抵抗戦線(NRF。アフマッド・マスード代表)が3月10日に、女性たちの声をすくい上げ人々の自由と尊厳を取り戻そうと「女性評議会」を設立した。会場には多くの参加者とともに、オンライン形式で数十人の評議会メンバーが参加したという。
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NRF外交部長のアリ・ナザリーは、その設立について「評議会は国民抵抗戦線の政策決定と意思決定に特別な地位を占め、抵抗を拡大し、アフガニスタン解放に近づくために、政治的、社会的、軍事的に女性の一般的な動員を追求します。テロ組織へのレジスタンスは性別、民族、宗教的信念に関係なく、アフガニスタンのすべての市民の積極的な参加を必要とします」と述べている。
元ニュージーランド首相で国連開発計画総局長も務めたヘレン・クラーク夫人は早速、「女性評議会結成」への賛意を表明した。
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これまで、欧米に外交団を送り、各国の支援を求めてきた国民抵抗戦線だが、EUは今も支援に踏み切っていない。アフガニスタン国際ニュースは、「EUアフガニスタン担当特別代表トーマス・ニコルソンは、最近、タリバン当局者との会合の後で『政治的観点から、欧州連合はアフガニスタンでの武装抵抗を支持するつもりはない』と表明した」と報じている。 (ツイートを表示)
さらに、同じくアフガニスタン国際ニュースは「元パキスタン政府高官のジョン・アチャクザイ氏が、『インドとタリバンの関係は緊密になり、在インドのアフガニスタン大使館をタリバンに引き渡すことに同意した』とパキスタン・ニュース紙に語った」とも伝えている。(ツイートを表示)
先日のイラン、トルコ両国がタリバンに現地大使館を引き渡すというニュースに続き、インドとタリバンとの急接近が伝えられ、抵抗戦線側は外交的に押しこまれていた。しかし、今回のNRF女性評議会の立ち上げは、抵抗戦線が単なる武装組織ではなく、女性の声を反映させる国民的政治組織として認知される大きな一歩になるのではないだろうか。
〈国民抵抗戦線・女性評議会のロゴ。ツイッターより〉
そうした新しいニュースとは別に、悲しくやりきれないニュースが報じられた。3月11日、北部の大都市マザリシャリフのタリバン文化センターで開催されていたジャーナリストの集会で爆弾が炸裂、10名が死亡し、20名が負傷したというのだ。ジャーナリストのパヤン・アザディが、「国連アフガニスタン人権理事会のリチャード・ベネットが、アフガニスタンの表現の自由への新たな打撃であるとして、タリバン当局に調査を要求した」と投稿している。同市で2番目に警備が厳しいという地域で、どうしてこのような事件が起きるのか。タリバンに治安能力がないのか、それとも違う意思が働いているのだろうか。タリバン批判を強めるジャーナリストを邪魔だと考える勢力が存在しているのだ。
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胸が痛むニュースが溢れるアフガニスタンだが、こうした状況を変えたいと強く願う人たちがいる。先述の抵抗戦線女性評議会の議長には、故ファヒム・ダシュティの妻ガレス・ダシュティがなったという。ファヒムは有名なジャーナリストで、日本に研修に来た際にも会ったが、マスードを心から敬愛していた。そのマスードの息子アフマッドを1人で戦わせるわけには行かない、と向かったパンシールで、ドローンに攻撃されて亡くなったと聞いた。彼の妻ガレスが夫の思いを継ごうとしている。
夫から妻へ、親から子へ、人から人へと伝わっていくものが必ずある。
カブールの裏通りで移動用の回転台で無心に遊ぶ子どもたちの姿を見ながら、「この子たちは何を引き継いていくのか、時代の荒波を飲み込まれることなく、それを引き継いでいってほしい」と願う。
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2023年3月14日 長倉洋海
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