アフガン情勢に関するメッセージ
2023年2月28日


「今日のメッセージ 2023/2/28」

 タリバンの外務大臣が「各国は『慈悲と人間としての愛情』に基づいてアフガニスタンの人々に対処すべきです」と国際社会に訴えた。素晴らしい言葉だが、その実践を自らがまず行ってほしいと願うのは私だけだろうか。(ツイートを表示

バルフ州の広報局が「女性がヘジャブを着用しないことを防止するために、また礼拝を行わない者のリストを作成するために、市内をパトロールすることを決定した」と、ToloNewsが報じた。(ツイートを表示

また、都市の全ての家族の個人情報を収集するための記入用紙を、マザリシャリフから配り始めたとPanjshir Provinceがツイートしている。 (ツイートを表示

〈各家庭を調べるタリバン。ツイッターから〉

 国民への締め付けを強めているタリバンだが、内部での権力闘争が続いている。主導権を握るアクンザダ師らの超保守派に対し、先日、改革の必要性を唱えて批判を口にしたシラジュディン・ハッカニ(元内相代行。最強硬派で、テロリストとして国際手配中)が、カブール市内で相手方を攻撃し武装解除をさせているようだ。同じように、アクンザダ派もハッカニ派を攻撃し武装解除を試みている。 (ツイートを表示

 締め付けを強めているも関わらず、治安は悪化している。サマンガンで30の病床を持つ病院の元院長ナジュムディン・サラビが家族と息子の前でタリバン軍に射殺された、とレポーターで元Tolo News の記者だったサレハ・ソハダが投稿している。 (ツイートを表示

 Amu TVは犯人について言及していないが、元インド大使で、故マスードの友人でもあったマスード・ハリリは「タリバンが射殺した」とツイートしている。タリバンの犯行だとしたら、医師がハザラ人だったのだろうか。医療を満足に受けられないアフガニスタンで、最も貴重な人材をそんな理由で殺したとは考えたくもない。いずれにしても心が痛むニュースだ。

 Hasht e Subh Dailyは「タジク国境警備隊が、タリバン2人を含むアフガニスタンからの麻薬密輸業者3人を殺害した」と報じている。また、パキスタンのバルチスタン州ではオートバイに仕掛けられた爆弾で4人が死亡したとAmu TVが伝えている。 (ツイートを表示

 パキスタン国内で軍事攻勢を強めるパキスタン・タリバン運動(TTP)に手を焼いたパキスタン政府は、カブールに外交団を送ってタリバン側からの圧力を期待したが、「パキスタンのエクスプレス トリビューン紙の報道によると、タリバン側は『パキスタンが費用を負担すればパキスタン・タリバン運動を武装解除する』と金銭を要求した」、とアフガニスタン国際ニュースが伝えている。 (ツイートを表示) (ツイートを表示

 そんな、国内外に問題を抱えるタリバンに味方が現れた。ヘジャブ問題が大きな反体制運動に繋がっている隣国イランが、アフガニスタン大使館をタリバン側に引き渡すことを決定したというのだ。対ソ戦のさなか、イランは同じ宗派のシーア派ハザラ人を支援してきた。アフガニスタン国際ニュースはバルフ州の元知事アッタ・ヌールが「イランに住む同胞の命に対する脅威だ」と非難していると伝えている。(ツイートを表示

また同じくアフガニスタン国際ニュースは、トルコ政府がのイスタンブールのアフガニスタン領事館をタリバンに引き渡そうとしている、と情報筋の話として伝えている。(ツイートを表示

〈イスタンブールのアフガニスタン領事館の写真。ツイッターより〉

両国の対応に対して、 Hasht e Subh Dailyは、女性の権利活動家のロヤ・シャリフィが「テロ支援だ」と強い抗議の声を上げていることを伝えている。(ツイートを表示

 イラン、トルコ。どちらも強権国家だが、タリバンと関係を深めることでどんな利を得ようとしているのだろうか。ロンドン在のアフガン人の友人に尋ねると、「彼らはタリバンにも、その反対派にも支援をしている。将来、どちらが勝利してもいいように保険をかけているのだ」と語っていた。これが国際政治の現実なのだろう。

 タリバンを財政的に助けている米国は、最近、タリバンがISの司令官を殺害したことを歓迎し、アフガニスタン問題の元代表だったサルメイ・ハリルザドが「タリバンはドーハ協定(米軍撤退の取り決めの協定)を遵守している」と語ったことを、アフガニスタン国際ニュースが笑顔の写真とともに報じている。(ツイートを表示

 米国をはじめとする各国がタリバンの側につこうとも、アフガニスタンの女性たちは黙っていない。「カブールで<アフガニスタン女性革命>運動が活動を開始した」とアフガニスタン国際ニュースが伝えた。女性の「働く権利と教育を受ける権利の達成が目的」で、運動する女性たちは「タリバン支配で人生に嫌悪感を抱くようになった」と語っているという。

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 女性たちは弾圧を受けても前に進もうとしている。一方で、戦いを続けている国民抵抗戦線は厳しい状況を強いられている。武器の補給や満足な食料もなく、タリバンが南部から送り込んだ1万を超える兵力を前に苦戦しているようだ。そうした状況を時には悲観的に捉えてしまうが、そんな時に、マスードの言葉を思い出すと、心が穏やかになる。

 かつてマスードの元を訪れたイギリス人女性が「どうしてそんなに穏やかでいられるのですか」と問うと、彼は「目的があるからかな。それが人生で一番、大切なことだよ。目的が何か知っていればあとは簡単だ。目的を達成しようがしまいが、それは構わないんだよ。私の目的は私の国を自由にすることで、そのために全力を尽くす。達成できなくても、それは私の運命なのだから、何を思い悩む必要がある?明確な目的があるから考え方や進み方を毎日変える必要などないのだよ。だから穏やかでいられるんだ。何も心配などないのだから」(アニカ書房刊。マルセラグラッド著『マスード 伝説のアフガン司令官の素顔』より)。

 全力を尽くす。そのことで、神に報われる・・・。戦いを放棄しない抵抗戦線の兵士たちも、声を上げ続ける女性たちも、そう考えて生きているに違いない。


  2023年2月28日  長倉洋海






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