「今日のメッセージ 2023/2/20」
逮捕・連行された女性活動家や大学教授、パンシール州の若者が未だ拘置されたままのアフガニスタン。人々はそのことに恐れと怒りを感じながらも、「今日という日」を生きていかなければならない。
人々の自立へのささやかな動きを地元TOLOニュースが報じている。首都カブールの北にあるプルコムリ市で、ある女性が教育を受けられない10人以上の少女のためにレストランを作ったという話題だ.。
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ここで働く少女は「学校が閉まり、自由に外に出ることもできない。ここで働いて2ヶ月間が経ちますが、おかげで家族を助けることができます」と話す。失業が当たり前で、国民の9割が食料難に喘いでいるアフガニスタン。自立が叶った女性たちの声は明るく、働く姿は生き生きとしていた。
ジャーナリストのパヤン・アザディ氏が、少し汚れた服を着た子どもたちがテラスで車座になってスイカを食べている写真をツイッターで紹介していた。みんな笑顔だ。1人は立ち上がって陽気に踊り出した。地面には黄色やピンクのビニール袋が見える。ビンやペットボトルなどリサイクルできるものを集め、それを売ってお金を稼いでいる少年たちで、誰かがスイカをご馳走したに違いない。
写真の彼らの笑顔に胸が締め付けられ、「しばしの休憩時間、しばしの喜びと安堵」を感じた。
学生時代の1975年に最初に訪れ、以来48年にわたり見続けてきたアフガニスタン。その間、たくさんの子どもたちに出会ってきた。苦しい生活を送っている子が多かったが、皆、いつも笑顔を浮かべていた。笑顔でつらさを乗り切ろうとしていたのだろう。アフガスタンは未だ苦難から抜け出せていないないが、子どもたちの笑顔に触れると、彼らの「生き抜く力」に私も生きるエネルギーをもらうような気持ちになる。
次のツイッター投稿写真の少年にも、私が出会った子どもたちの姿が重なった。
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トルクメンの刺繍帽をかぶり、少し膝を崩して座っている男の子。大人びた座り方と顔つき。自信と誇りに満ちているのがアフガニスタンの子どもたちの特徴だ。座っているのはチャイ・ハナ(茶店)だろうか。食べているのはナン。焼いてから時間が経っているのか、固くなっているようだ。チャイ・ポットを自分で注いで飲んでいるのはチャイ・サウズ(緑茶)だろう。投稿者は「チャイは平和の象徴であり、穏やかさともてなしの象徴」と綴っている。まさにチャイはくつろぎの象徴。その時間は安寧の時だろう。少年は町の市場で売る薪やクルミなどをロバに積んでやってきたのかもしれない。厚手のセーターは、寒暖差の激しい山間部の住民であると物語っている。家から持ってきていたナンを、注文したチャイで食べているのだろうか。
子どもたちの大人っぽい仕草や誇りに満ちた表情は、家族を支えている証。普段は大人のように振る舞っていても、学校に向かうときは表情が一変、好奇心でいっぱいになる。二つの表情の乖離に私は魅かれる。大人と子どもの間を揺れ動く瞬間を捉えたいと思っている。
カブール西部の焼け落ちた橋があった場所で、「3日間のブックフェアが開かれた」とアフガニスタン国際ニュースなどのいくつかのメディアが報じている。
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かつては麻薬中毒者たちの溜まり場だった場所を化粧直しして解放したのは、カブールの自治体だという。それを「学校を閉鎖したタリバンが教育に熱心だと見せるためのポーズだ」と訴える亡命者のツイートや、「麻薬を禁じても、中央アジア最大の麻薬販売者だ」と非難するツイートもあった。「このようなことが、女の子がまだ学校に行くことを禁止され、女性が大学に行くことを禁止されていることを私たちに忘れさせると思いますか?」という投稿もある。
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それらにも一理あるだろう。が、ここで本に熱心に見入る少女や少年、そして男性と女性の姿に、圧政下といえども、なんともいえない開放感のような空気が漂っていると思えた。もちろん、このことはタリバン全体の目指す方向性ではなく、タリバンの中心で権力を握っているのは女子教育を認めない超保守派だ。それでも、これが風穴となって何かが変わるきっかけになるといいと私は願っている。
アフガニスタンの現実は未だ厳しいままだ。Amu TVは「パスポートセンターは閉まったまま」と報じている。前回のメッセージで「カブールから逃げ出そうとした市民が空港に殺到、タリバンは威嚇射撃をして人波を追い返した」と伝えたが、以来、パスポート発給を停止しているようだ。
また、国民の20%近くを占めるハザラ人が信仰するイスラム・シーア派の歴史的な寺院を閉鎖し、シーア派が運営するテレビ局も閉鎖したというニュースを、フリーランスジャーナリストのサイード・ザビウラーが伝えている。
〈寺院の前に集まったシーア派の指導者たち。ツイッターより〉
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何度もお伝えしているように、タリバンは一枚岩ではなく、いくつものグループがあり激しい内部抗争を続けている。そのことで、下部の兵士が勝手に動いたり、海外からの過激派組織が加わることで足並みも揃わない。それで国家運営ができるはずもなく、だからこそ、世界でタリバンを政府としてあるいは国家として認める国がこれまでに一つも現れないのだ。
タリバンのテロ攻撃容認と国際テロ組織とのつながり。そのことに明確に反対しているのがNational Resistance Front of Afghanistan (NRF)国民抵抗戦線だ。そのリーダーは、故マスード司令官の息子アフマッド・マスード。彼の動画が「彼こそがアフガニスタンの最後の希望です」という言葉とともに投稿されていた。彼が見せる笑顔はまさに父親譲りだ。
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彼が持っている無垢な笑顔は、家を助けて働く子どもたちや向学心に燃える子どもたちと心を通わせることができるだろう。最近、彼が8歳くらいの頃に撮った写真を見つけた。
父親の遺志を継ごうなどとは思っていなかった腕白時代。彼がこれからどんな道を辿るのか。アフガニスタンの未来とともに、それも見届けたいと思っている。
2023年2月20日 長倉洋海
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