アフガン情勢に関するメッセージ
2023年2月15日


「今日のメッセージ 2023/2/15」

 トルコ・シリア国境地帯での大地震で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。ご身内、ご友人、かけがえのない大切な人を亡くされた方々が大勢おられると思います。その心の内を思うと切なさでいっぱいになります。地震が収まり、以前のような生活が戻ることをただひたすら祈っています。
この震災でアフガン人200人が亡くなったというツイートもあった。

アフガニスタン難民の仮設住宅は簡単に崩壊してしまったことだろう。

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 シリアからトルコに逃れてきた人たちも数千人という規模で亡くなっている。トルコ南部に暮らすクルド人を含め、死者は4万人以上、類を見ない歴史的な大震災となった。どうして戦火や内戦で苦しむ人のところで…と思うばかりだ。アフガニスタンの人々も心を痛めているようで、マスード財団もさっそく救済基金を募っている。私たち「アフガニスタン 山の学校支援の会」も、どんな支援ができるかメンバーとともに考えている。

 震災でないが、アフガニスタンでは通常ではあり得ない事態が起きた。タリバンと覇権争いをしているIS(イスラム国)が首都で大規模なテロ攻撃をかける、あるいはタリバン内の軍事衝突が起こる・・・という噂が流れ、パニック状態になった大勢の人々が空港に殺到、タリバン兵が空に威嚇射撃をして押し返す騒ぎとなったのだ。タリバン政権の治安能力への不信と、監獄のような国からなんとか逃れたいという気持ちが一気に表出したのだろう。

〈空港に殺到する車の群れ。ツイッターより〉

Aamaj news は空港に向かう人たちを撮影している。(ツイートを表示)

 その数日後、ツイッターでは、車から外に向けて狂ったようにピストルを撃つパシュトゥーン人の若者の映像が投稿されていた。酒や薬物のせいではなく、ただ気晴らしで外に向かって撃っているのを同乗している仲間が撮ったようだ。発砲があっても、走り出すこともなく平然と道路を歩いている人の姿もある。アフガニスタンでは通常の感覚が崩壊しつつあるのだろうか。人々がこの国から一刻も早く逃れたい、と思っても当然だ。
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 タリバン内部では、深刻な対立が露呈している。アフガニスタン国際ニュースが「ハッカニ内相代行が『最高権力者アクンザデ師が権力を独占している』と批判した」というニュースを伝えている。タリバンのスポークスマンは「そうした批判は表沙汰にすべきでない」と発言、法務次官は「システムに反対する動きは許すことはできない」と警告している、とAmuテレビは報じている。

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★内相シラジュディン・ハッカニの、最高指導者への批判動画 (ツイートを表示)

また、アフガニスタン国際ニュースは「指導者アクンザデ師が女性教育に態度を変えないなら辞任すべきだ、という声が内閣内部にある」ことも伝えている。(ツイートを表示)

タリバン内部の対立は深刻で、一説ではハッカニ内相代行が解任されたという報道(2月9日付毎日新聞)もあり、首都でのクーデターなどの軍事衝突の可能性が排除できない。アフガニスタン国際ニュースは「ロシアのアフガニスタン担当特別代表は『タリバンは自らの政府を破壊しかねない深刻な課題に直面している。それは外的なものではなく、それは現在の状況では生き残るのが困難だと感じているアフガニスタン人の通常の反応である』と述べた」と伝えている。(ツイートを表示)

 内部で熾烈な権力闘争が行われていても、首都や地方都市での女性活動家への弾圧は続いている。女性活動家のナルゲス・サダトはカブールで逮捕、連行されたままだとBBCペルシャ語放送が伝えている。

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また北部のタハール州では、やはり女性活動家のパリサ・ムバリツが逮捕されたとAmuテレビが報じている。勾留中に殴られ、以降の活動をしないように脅されたという。彼女は体調を崩したままのようだ。

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地域の長老たちが交渉して彼女は解放されたというが、多くの女性たちも釈放を求めて立ち上がっていた。

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デモ隊の1人が掲げている「タリバンのいない国が欲しい」というスローガンが、切実な響きを持っている。前政権は汚職などさまざまな問題があったが、楔から解き放たれた女性たちは自由を手にし、自立を求めて羽ばたくことができた。しかし、現在のアフガニスタンは自由に歩き、語り、楽しむことは奪われ、彼女たちはまるで監獄の中にいるように感じているに違いない。だからこそ、命をかけても声を上げ続けているのだ。

 前政権の警官や議員への殺害も絶えない。ラグマン州では元警官が殺害され、首都カブールでは国民抵抗戦線の春の攻勢を警戒してか、パンシール住民の家を捜索して、次々に連れ去る事件が多発している。
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 タリバンのハッカニグループが、自爆テロと爆破操作の教育を施し、その卒業証書を手にしたタリバン兵の写真を元トロニュースのレポーターであるサレダ・ソアダがツイッターに投稿していた。

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 こうした事象から、タリバンの目指すものが見えてくる。それは国民の平和や幸福ではなく、自分たちの権益や狭溢な宗教観の実現だ。そんな彼らがトルコへの救助隊を送る用意があると述べたという。自分たちの国民を救い、その声を聞くことこそ、彼らに求められているのだが、彼らはそれに気づくことがない。


   2023年2月15日 長倉洋海

★ツイッターで見つけたパンシール渓谷のヘンジ地区の写真。宝石の売買で富を手にした人が多く、「パンシールのドバイ」と評される。今も降雪が続いているが、春はくる。
そしてタリバンのいない春もきっと来るに違いない。





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