アフガン情勢に関するメッセージ
2023年2月6日


「今日のメッセージ 2023/2/6」

 先週のメッセージで、「女性活動家のセラジ女史が、カナダのラジオインタビューで『タリバンへの制裁は、アフガニスタン国民を苦しめることになっている』と、タリバンへの支援停止を求める女性活動家を非難した」と伝えた。その彼女が、ノーベル平和賞の候補になったという。それについては賛否両論があり、「候補から削ってほしい」と言う声が他の女性活動家の団体から上がっている。

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私は、どちらが正しいかはわからない。しかし、お互いに国民のために話し合い、歩み寄ることで対立が解消できることを望んでいる。敵対し、どちらかを排除するのはタリバンのやっていることと同じだからだ。

前回のメッセージでは、タリバンを権力の座につけたことが決定的な間違いだった、と書いたが、責任者の1人であるアシュラフ・ガニ元大統領についての新しいニュースが伝えられた。
タリバンを前に命惜しさに国から逃げただけでなく、カタールが「タリバンに抵抗しないように」と渡した1億1000万ドルのお金を受け取っていたということを、イタリアのテレビ局TG1がお金の受領を示す文書とともに明らかにしたと、アフガニスタン国際ニュースが伝えている。(ツイートを表示

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不正選挙で大統領になったガニと、不正に目をつむり支え続けた米国。どちらもアフガン国民のことを考えていないということではタリバンと一緒なのかもしれない。

そのタリバンは、女性の教育を受ける権利を支持していた大学教授イスマイル・メシャールを逮捕した。テレビの生放送で、タリバン体制下での卒業証書を認めずそれを破ったことがある人物だが、Amuテレビは、彼が著書を女性たちに配ったという理由で逮捕されたと報じている。

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思想弾圧も続けるタリバンに対し、パキスタンの国連大使が「女性がアフガニスタンで働き、勉強することを禁じるのは、パシュトゥーンの文化だ」と擁護するような発言をしている。
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パシュトゥーン人の多くは、父親も娘も女子教育を望んでいるから、パシュトゥーンの文化とは言えないだろう。よしんば、認めない人がいたとしても、彼らはまずイスラムの教えに従って、女性の権利を認めるべきだ。
女性の就労と教育の権利を認めない国は、タリバン統治下のアフガニスタンだけだ。
パキスタン国連大使のこの発言に対し、ツイッターでは「それはパシュトゥーンの文化ではなく、タリバンの文化だ」という声が上がっている。


タリバンのもう一つの文化ともいえるのが、自爆テロだ。Hasht e Subh Daily紙は「タリバンはこの2年半の間に30回の自爆テロ攻撃を行い、1000人以上が死亡し、1500人以上が負傷した」と報じている。

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Amu TVはカブールの北のバグランで「先月3名の女性が殺された」と伝え、アフガニスタンのタリバン統治下の深刻な治安の悪化状況を伝えている。(ツイートを表示

治安の悪化に加えて、IS(イスラム国)が自爆テロを増加させている。最近ではロシア大使館や中国人が泊まるホテルが標的にされ、死傷者が出ている。そうした状況下、サウジアラビア、パキスタン、UAEが、大使館業務を代行させていた自国の外交使節団をパキスタンのペシャワールに避難させたというニュースがあった。 その避難先であるペシャワールでは、パキスタン・タリバン運動などによる自爆テロに抗議する大規模なデモが続いている。


 タリバンから始まった自爆テロが、同様の思想を持つISやパキスタン・タリバン運動に広がり、この地域一帯の人々を不安に陥れている。その発端は、パキスタン軍部が主導した自国戦略に沿った過激派支援から始まっている。先日、パキスタンのムシャラフ元大統領(79歳)が亡命先のドバイで亡くなったが、彼もアフガニスタンへの介入を続けてきた。9.11(米国の同時多発テロ事件)が起き、米国からの圧力が強まると過激派と縁を切ったかのように振る舞ったが、米国が探し求めるオサマ・ビン・ラディンを国内に匿うなど、関係を切ることはなかった。
彼の生前のインタビューがツイッターに出ているが、その中で「私たちが世界中からイスラム戦士を連れてきた。タリバンを訓練して武装させ、アフガニスタンに送った。彼らは私たちのヒーロー、ハッカニも私たちのヒーロー、ビン・ラディンも私たちのヒーローでした」と述べるなど、真意をのぞかせている。
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このインタビューは、パキスタンが現在のアフガニスタンの混乱に関わってきたことを表している。パキスタンが利用しようとした過激派組織。その脅威が回り回ってパキスタンを脅かしている。まるでブーメランのように。
 タリバンは自らのブーメランを、いつ受けることになるのだろうか。


      2023年2月6日     長倉洋海


 ツイッターで見つけた、ロバを駆るヌーリスタンの少年の映像が私を和ませてくれた。「走れ、走れ、暖かい日差しの中を無心に走れ。その先にきっと希望があるはずだから」と、エールを送りたい気持ちになった。.
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