アフガン情勢に関するメッセージ
2023年1月31日


「今日のメッセージ 2023/1/31」

 アフガニスタンの首都カブールは、この20年来で最大の寒波に襲われ、子供や生活困窮者など100人以上が亡くなったとNHKが伝えている。 (NHKニュースWebより)


〈ザクロが売られたカブールの路上。ツイッターより

雪降る中を歩く人々の姿はロマンチックな趣さえ感じるが、その寒さの中で働き続ける物売りや靴磨きの人の切なげな表情が見る者の胸を突く。

〈雪降る中、路上で物を売る人。ツイッターより

地震や災害、さらに寒波に苦しめられる人々。BBCの女性記者がタリバンの災害管理大臣にインタビューを行なった。記者は、「こうした環境下で、女性の役割は大きいのではないか」と、女性の就労を認めないタリバンの政策への再考を迫った。しかし、大臣は「世界は私たちの宗教を尊重すべきだ。私たちの宗教は女性が働くのを認めていない」と答えた。
以前のメッセージでも述べたが、預言者ムハンマドの妻ハディージャは商人で、迫害の対象となった夫を助け、最初のイスラム信徒となり、のちにはイスラム教を広めるのに大きな役割を果たした。大臣はそのことを知らないのか、あるいは無視しているのか。どちらにしても、彼の言説は世界のイスラム教徒にも全く説得力を持たない。

そのタリバン政権が、女性の大学受験の受付をしないようにと各大学に通達を出したことが、通達書の写真とともにツイッターに投稿されている。
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このような状況で未来を悲観するのは、女性ばかりではない。最大の日刊紙Hshte Subh Dailyは、バダフシャン州の少年が「この世界にうんざりしている」という遺書を残して自殺したことを報じている。この少年がどうして自分の人生を自らの手で閉じなければならなかったのか…。その問いに、私たち一人一人が答えを探そうとしなければ、この少年の死は報われないと思う。

〈少年さえも未来に希望を持てずに…。ツイッターより〉

「国内で希望を見出せず、国外に逃れても、一年以上難民キャンプに閉じ込められ、希望する国に向かうことができないままの人たちが、中東のアブダビから抗議の声をあげている」とAmu TVが伝えている。建物の壁には人種差別だという横断幕が掲げられていた。ウクライナ避難民との対応の違いを訴えているのだろうか。

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 そんな状況下、女性活動家として有名なセラジ女史の発言が一石を投じている。カナダのCBCラジオのインタビューで、「アフガニスタンへの制裁は、タリバン政府よりもアフガニスタンの一般の人々を苦しめている」と、厳しい制裁を要求する女性活動家を非難したというのだ。
人々を救う援助は必要だが、それがタリバンの延命に繋がるなら認められないと、いう人もいるだろう。私自身は、人員を派遣し援助を最前線で見届けることができるなら、人道援助を早急に促進すべきだろうと思っている。しかし、タリバンがそれを拒んだらどうするのか。そうしたお金がパンシールや北部のタジク人、中央高地のハザラ人への弾圧に使われるなら、断じて許すことはできない。
米国のような、何の条件も監視要員も付けずに数十億ドルを送ることは、タリバンを利するだけだ。援助すべきか、やめるべきか。その答えを求めていくと、タリバンのような集団に権力を握らせてしまったことそのものが最大の過ちだったと言える。
自軍撤退のためにタリバンに権力を渡した米国。かつてセラジさんは「アフガニスタンの混乱は、米国や欧州が勝手に手を突っ込んで腐敗や汚職を引き起こし、荒らしたままで去っていったことが原因だ。それらの国々に怒りを覚える」と話していた。今も、欧米が自国ファーストの立場を崩さないままアフガニスタンについて語ることに、彼女は怒りを覚えているに違いない。
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 セラジさんのような国民のために支援を、という考えも、タリバン失脚を目指す女性活動家の考えも、それぞれにアフガニスタンの未来を考えてのことだ。アフガニスタンのことを本気で考える人々が、この国の運営を担うべきだ。アフガニスタンを救えるのはそうした気持ちの持ち主だけだと思う。アフガニスタンがどうしたら自由を取り戻せるのか、私はどんな形でその手助けができるのか…。今もそれを考え続けている。


      2023年1月31日     長倉洋海





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