アフガン情勢に関するメッセージ
2023年1月16日


「今日のメッセージ 2023/1/16」

  「家から街へ。タリバン打倒のために”キャンペーンが始まり、全国の人々がそれに応じている」と日刊紙Hashut e Subh が報じている。

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他にも、雪の上や家の壁にスローガンをスプレーしたり、自室でタリバン批判のイラストを描くなどの抵抗の様子を伝えている。(ツイートを表示)

Amuテレビは、スローガンを書いた腕を組んで団結を示す女性たちの姿を投稿した。


 学校にも行けず、働くことも許されないばかりか、家から自由に表に出ることさえも許されない現状への強い怒りがこの運動の原動力となっている。「このままでは窒息して死んでしまう」という憤りが女性たちを突き動かし、『タリバン打倒』を叫ばせている。その一方で、悲しいニュースもあった。30歳の女性がファリアブ州で首を吊って自殺したというのだ。
タリバンが、NGOで女性が働くことを禁じて以来、困窮する女性の元に国際支援が届かなくなっている。支援団体の男性職員は女性との接触を禁じられているから、受け取ることのできる男性のいない女性だけの家庭は支援を受けられないのだ。女性世帯はこの厳しい冬、どうなってしまうのだろうか。また、同じ理由で病院や政府機関でも女性に対応できる人がいなくなっている。タリバンは国家運営も人々の生活も全く眼中にない。あるのは狂信的なイスラム思想をどう強制させるか、という一点だけだ。


〈ツイッターに投稿されたイラスト〉

そんなアフガニスタンで、タリバン外務省が自爆テロ犯に襲われ、40名とも言われる職員が犠牲になった。犯行はIS(イスラム国)によるものと思われるが、同時にタリバンの治安能力のお粗末さを露呈した。犠牲になったのはタリバンとは直接関係のない外務官僚で、パシュトゥーン人以外のタジクやウズベク人が多かったようで、それがいっそう悲しみを募らせる。 (ツイートを表示

犠牲者の葬儀の席で、外務大臣のムッタキはタリバンを礼賛し「今の体制が最良のシステムだ。淫行も、外国人も、ワインも腐敗もない」と述べた、とアフガニスタン国際ニュースが伝えている。
その言動を理解できない。しかし、彼らがこれまでも自爆攻撃を礼賛し、作り上げたテロ実行部隊で実際にテロ攻撃を行っていることは知っている。驚いたのは、タリバンが首都カブールの博物館に、自爆ベストとそのリモコンを寄贈したというニュース映像だった。ご丁寧に、「ベストに埋め込まれた多数のスパイクが殺傷能力を高める」とも紹介されている。これが博物館に展示すべきタリバンの文化なのだ。歌や踊り、アート活動よりも、こちらの方が価値が高いと思っているのだ。

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米軍撤収後、タリバンが最初に解放したとされるニムロズ州の州都サランジでは水不足のため、水の配給に並ぶ人々の様子をHasht e Subh紙が報じている。

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アフガニスタン北西部のバドギスでは、寒波で4000頭もの牛や羊などの家畜が死んだことが報じられている。 (ツイートを表示

厳寒の中、テント生活を強いられている人々の姿もある。 (ツイートを表示

水不足や降雪だけでなく、タリバンによる人災もある。カブールのミクロヤン団地そばで、ホームレスの女性がタリバンに集団暴行を受けたことを涙ながらに訴えている。 (ツイートを表示


 米国は、アフガン国民支援のためにと膨大な現金を渡し続けてきた。タリバンがそれを国民のために使っていれば、もっと状況は変わっていたはずだ。タリバンは自分たちのことしか考えていない。
タリバンの言っていることと現実との大きなギャップ。それを「タリバンの嘘つきはずっと変わっていない」とARAB NEWSのLuke Coffey記者が署名記事で書いている。
ARAB NEWS記事
内容を簡単に紹介したい。
最初、「包括政権を作る」と約束したが実行されていない。第二に、女性就学について「行う」と明言していたに関わらず、停止し、復活させていない。また、最近公開されたポルシェ張りの自国生産スポーツカーだが、エンジンはトヨタのカローラのもので外観だけ自作のようだ。車は国民が食べることができない。
NGOの女性就労を禁じて、97%の人が直面している貧困と飢餓にどう対処しようとしているのか。新しいタリバンは1990年の過激で偏狭なかつてのタリバンに戻っている。世界の国々はタリバンと話すのに、どうして国民抵抗戦線などと話し合いを持とうとしないのか、ともコーフィー記者は問いかけている。

その国民抵抗戦線は、世界からの支援を受けられないまま自力で抵抗を続けている。
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〈マイナス35度のヒンズークシュ山脈で。抵抗は続く。ツイッターより〉

抵抗をやめないアフガン女性への連帯の声も上がり始めている。 (ツイートを表示

驚いたのは、昨年末だがあのハッカー集団Ananimousが「タリバン国防省のサイトを乗っ取り、アフガニスタンの子どもと女性を支援すると声明した」とアフガニスタン国際ニュースが報じた投稿だった。


最近のツイッターで見た、物売りの少女の笑顔が切なかった。国連職員から「持っているボールペンが売れたら幸せ?」と聞かれ、頷いた少女。全部買うからとお金を渡され、「多すぎるよ」と言ったが、はにかんだ笑顔が浮かんだ。もらったお金を手にスキップを踏みながら帰っていく姿が子どもたちの置かれた厳しい状況を物語っていた。 (ツイートを表示)

かつて、子どもたちが楽しそうに通学していたアフガニスタン。そんな頃の通学風景がツイッターに上がっていた。 (ツイートを表示)

 一刻も早くこのようなシーンが復活して欲しいが、アラブニュースのコーフィ記者が指摘しているように、タリバンの統治下では決して好転することはないだろう。タリバンを信じるのではなく、世界は新たな角度からアフガニスタンのためにアプローチを開始すべきだ。それが人々の苦しみを早く断ち、笑顔を取り戻してもらう最善の方法だと思う。


      2023年1月16日     長倉洋海





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