「今日のメッセージ 2022/12/26」
先週、メッセージをアップした直後、「タリバン、女性の大学教育の停止を決定」というニュースをBBCが伝えた。(BBCニュース)
時事通信も、各国の反応を交えてそのことを報じている。(時事通信ニュース)
これまで中高の女子教育を停止していたから、いつ再開するのかと、その日が来ることを願っていたが、最悪の結果となった。タリバンは中途半端な今の形ではなく、All or nothing 、全てを戻すか、全てを無くすかの選択をし、後者を選んだのだ。これでタリバンはますます世界から孤立し、露ほどに残っていた人心も霧消したのではないだろうか。
国連ばかりか、トルコやサウジアラビア、アラブ首長国連邦など、タリバンと関係のあったイスラム諸国からも「女性の教育禁止は本来のイスラムからも外れる行為」と是正を求める声が上がった。そうした世界からの声を待つまでもなく、首都カブールばかりか東部のナンガルハル州、北部のタハール州、南部のカンダハル州などで女性のデモが続いている。
このニュースを大学で知らされ、中に入ることができず、門外で泣き崩れる女子学生たちの姿をAmuテレビが伝えている。
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驚愕と悲しみの表情を見せる女性学生たちの姿もあった。「私たちは何をすればいいのですか?自殺ですか?」と話している様子がツイートされている。
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★市内で抗議活動をする女性たちの映像。数人が連行されたという。(ツイートを表示)
女子学生に呼応して、男子学生も立ち上がっている。東部ナンガハル州の大学では、キャンパスで抗議する男子学生と女子学生の映像をアフガニスタン国際ニュースが報じている。
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抗議の辞任をする大学教授も現れている。男子学生は試験を辞退した。(ツイートを表示)
カブールの私立大学で、男子学生たちが次々と教室を後にした様子もツイッターに投稿されている
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一方で、女子学生が消防車から放水される様子や、カンダハルの大学生に向けての発砲など、学生への暴行の様子をBBCがSNSからの引用映像として伝えている。
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BBCは抗議デモに参加した女性たちが逮捕、暴行されたことも伝えている。(BBCニュース)
Amuテレビは、女性のデモ参加者が逮捕される瞬間の映像を流している。(ツイートを表示)
それでも、人々は諦めてはいない。
女性の抗議デモが続いていた西部の都市ヘラートでは、女性の大学教育停止に対して、店のシャッターを下ろして抗議する様子がツイッターで伝えられている。
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国民的競技であるクリケットなど、スポーツ選手にも抗議の波が広がり、イスラム学者からも反対の声が上がっている。アフガニスタン国際ニュースは、イスラム世界最高の教育機関として有名なエジプトのアル・アズハル大学のムスリム学者評議会が「女性の教育に対する基本的、および宗教的権利を奪うもの」と反対の声を上げた、と伝えている。 (ツイートを表示)
そうした世界の声に耳を貸すこともなく、逆に、反対意見を述べた政治学者の家に逮捕の人員が向けられた、というニュースもあった。(ツイートを表示)
今回の決定は、内部に反対意見があったにも関わらず、最高指導者アクンザダ師による決定とされる。女子教育に前向きだったナディーム高等教育相の意見は通らなかったという報道もある。
〈アクンザダ師の写真に火をつける女性。正面はナディーム高等教育相の写真だ。ツイッターより〉
日本の外務省は今回のタリバンの決定を非難し、撤回を求める声明を発表した。しかし、今の時点で最もタリバンに影響力を持っている米国は、自分たちがタリバンを支えていることには触れず、「タリバンは世界から孤立し、報いを受けるだろう」と他人事のように語っている。これでは、米国の唱える「民主主義」は、世界の覇権国家を狙っていることを覆い隠すための、単なるお題目のように見えてしまう。日本もそんな米国に頼るのではなく、自らの足で立ち、自分たちの言葉で語ることの必要性が問われるのではないか。
正義と自らの思想を貫くことは簡単ではない。冬のヒンズークシュの山中で戦い続ける国民抵抗戦の兵士たちは、厳かに「ヤルダ(冬至の祝い)」をし、これからの戦闘継続を誓っていた。
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かつてマスードは、インタビューの中で「女性は国家再建に大きな役割を果たすことができる。社会参画を止めるのではなく、逆に促したい。」と述べていた。その動画が投稿されている。
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息子のアフマッドも、「女性が教育を受ける権利は、私たち国民抵抗戦線が妥協したくない最も基本的価値です」と現代イスラムでの女性教育の重要さについて語っている。(ツイートを表示)
今回の決定は、タリバンが「世界が認知しないならそれでいい。自分たちは正しいと思ったことをやるのみだ」という方針であることを明らかにした。世界から孤立しては国家運営ができないと考える内部勢力もいるのだろうが、それを上回る超保守的で狭義的なイスラム解釈しかできない人たちが力を持ち続けている。これから折にふれ、タリバン内部での意見の違いが露呈して来るだろう。だが、それよりもタリバン崩壊に決定的な役割を果たすのは、アフガニスタンの人々の「さまざまなことを学びたい」「幸せに生きていきたい」「争いではなく平和をこそ大切にしたい」、と思う気持ちに違いない。
昨日はクリスマスでした。私はキリスト教徒ではないですが、ジョン・レノンが歌う『Happy Christmasー戦争は終わった』がとても好きでした。昨夜は、平和への思いがアフガニスタンにもウクライナにも届きますようにと願いながら、久しぶりにこの曲を聞きました。
Happy Xmas (War Is Over) - (YouTubeより)
2022年12月26日 長倉洋海
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