アフガン情勢に関するメッセージ
2022年11月21日


「今日のメッセージ 2022/11/21」

 タリバンの最高指導者アクンザダ師が、全ての裁判官にシャリア(イスラム法)の適用を厳格に行うよう命じ、公開処刑や窃盗犯の手足を切断、石投げやムチ打ちなどが復活することになった。タリバンは、女性の公園やハマム(公衆浴場)への入場禁止に続いて、人々を更に縛り上げる施策を次々に発表。AFP通信がその内容を伝えている。(Yahoo- AFPニュース)

 今までは、世界や人々の反発を予想してか、時代錯誤的なイスラム運用を控えていたタリバンだが、「世界の圧力もこの程度か」と高を括って暴挙に出ているのだろうか。隣国イランでは、ヒジャブの着用を巡って起きた騒乱で100人以上の死者が出、イスラム革命の指導者、故ホメイニ氏の生家が焼かれるなど、抗議の波は体制批判へと拡大している。また、タリバンをサポートし時には操ってきたパキスタンは、パキスタン・タリバン運動やバルチスタン独立運動に揺れている。そうした反政府運動の高まりに焦りを覚えたのか、世界社会の反発も無視して、国民をがんじがらめに縛り上げようとしているように見える。

★ホメイ師の先祖代々の家が燃やされているという映像。(VOADariのツイートより


国連の人権特別委員のリチャード・ベネットは、以前お伝えしたアフガニスタンの女性活動家への逮捕・勾留に触れ、「ザリファ・ヤコビと彼女の4人の同僚を直ちに釈放すべきだ。すべてのアフガニスタン人に、平和的な集会と言論の自由の権利がある」と述べているが、タリバンには『馬耳東風、暖簾に腕押し、糠に釘』で全く応じる気配がない。

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 国内での弾圧ばかりではない。アフガニスタンで活動するテロリストグループの脅威も高まっているが、それに対して、あまりにも世界各国からのリアクションは少ない。国民抵抗戦線の外交部長アリ・ナザリーは「その団体数は少なくても23。20年前のタリバン統治下よりも数は増し、数千の構成員が活動している」と警鐘を鳴らしている。(ツイートを表示

そうした過激派・外国兵について、ファワド・ラメ(前トロニュース・スタッフ)は「彼らは、ただパンシール人という理由だけで人々を連行、処刑している」とパンシールのタリバン兵が、トラックの荷台に捕らえた人々を乗せている映像とともに投稿している。(ツイートを表示

 しかし、タリバンの圧政がどんなに強くても人々は諦めていない。この女性たちは国連に「アフガニスタンの現状に目を向け、変革への圧力を加えて欲しい」と100通の手紙を出したという。投稿には「モロッコで最初に大学を設立したのは、ファティマという女性ではありませんでしたか」という文章も添えられている。

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★10月27日に行われた、カナダのオタワでのアフガン女性への連帯集会を知らせるポスター。ツイッターより

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 ツイッターに懐かしい人の名前が上がった。その名はファヒム・ダシュティ。昨年このメッセージでも紹介した。有能なジャーナリストとして知られ、日本政府に招かれて訪日したこともある。その時私は、日比谷の松本楼で食事をし、彼がリクエストしたマスードの写真集を贈呈した。それを手にしたときの幸福そうな笑顔が忘れられない。
彼は昨年、和平交渉を打ち切ってパンシール渓谷に侵入してきたタリバンの攻撃を受け死亡したが、この投稿では妻が彼について話していた。国民抵抗戦線のスポークスマンとなっていた彼は「アフマッド(マスードの息子。国民抵抗戦線リーダー)を1人にはできない。マスードが見ているから、とパンシールに向かった」と涙ながらに語っていた。

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 ファヒムが敬愛したマスード。その碑が、米国カリフォルニア州に建立されたという。米国マスード財団は、その場所は「マスード渓谷」と名付けられた、と伝えている。

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 そのマスードの長男アフマッドは、つい最近のインタビューで、「私はいかなる軍事援助も望んでいない。私が望んでいるのは、アフガニスタンの状況に対する政治的解決を見つけること、そして、人々に誠実な政治的支援を与えることです」と語り、包括政権を目指すことを表明している。しかし、交渉に応じないタリバンを前に、非武装になることは考えていない。タリバンを交渉の席に就かせるためにも、軍事的な抵抗は必要なのだろう。

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他の動画インタビューでアフマッドは、「タリバンとイスラム国は、同じメンタリティ、同じ残虐性を持っています。彼らに対し世界が、イラクが、シリアが、自分の国を防衛するために戦っているのですから、私たちにだけ戦いをやめなさいというのは筋が通りません」と話している。
 タリバンが一番恐れているのは国民の全国的な蜂起だ。その導火線となるかもしれない国民抵抗戦線を潰そうと躍起になっているが、いずれにせよ、国民を力と恐怖で押さえつけようとするタリバンに未来はない。人々の自由と希望を求める気持ちが、いつかタリバンを追い込むはずだ。
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 このメッセージでも、自爆テロによる負傷、そして大学合格と何度かお伝えしてきたファティマ。彼女は治療費用のサポートを求めていたが、彼女の願いに応え活動を続けてきた歌手のファルハドが『治療の最初のステップが取られた』と報告している」と、BBCが伝えている。

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一時は未来を奪われたかのように思えたファティマ。が、彼女の未来の夢と復活への思いがまわりの人々に伝わった。暗転した彼女の人生だが、道明かりをひとつ見つけたことで進んでいくことができた。そうした「人との出会い」、その機会は、誰にでも平等に与えられているものだと私は思う。

    2022年11月21日  長倉洋海




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