アフガン情勢に関するメッセージ
2022年11月6日


「今日のメッセージ 2022/11/6」

 BBCペルシャ語放送で「タリバンによってマスードの墓石が壊された」というニュースが流れた。

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 墓が荒らされるのはこれで3度目。タリバンは自分たちで壊し、直し、壊している。当初のマスードの墓には、ガラス面に美しい文字でコーランの一節が書かれていた。にも関わらず、タリバンは破壊した。こうした行為は、タリバンがイスラムの道から外れた不信心者の集まりだということをよく表している。このことに世界中のイスラム教徒が悲しみと怒りを覚えていることだろう。
 そのニュースに対し、「墓が冒涜されても、彼の遺産は消えるわけでない。マスードは多くの人の心の中で生き続けます」という投稿があった。
最初にマスードの墓が破壊された時に、マスードの妹であるマリアンがツイートした言葉を思い出した。

『マスードは一握りの土ではありません。
マスードはガラスや石でもありません。
マスードは道です。
マスードは信念です。
簡単には消えません。
マスードの学校ではイスラムのあるべき姿、
男女の平等、表現の自由、
人として成長するための生き方を学ぶのです。』

困難の中でも、国民のことを考えながら、いつも前を向いていたマスード。その生き方は、彼の青年のような爽やかな笑顔に現れていると思う。


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このツイートの動画内で、マスードの笑顔の後ろで流れる歌はこう歌っている。
「私は、人道的尊厳を保ち続ける多くの男性を見てきました。
それは魂の輝きを持った人々です。
そうです、自由の闘士たちは、死ぬことさえも人生の一輪の花として抱きしめたのです。彼らは、死を無の縁から永遠の命へと自らを導くことができた人たちなのです」

 そうした人たちの墓を各地で荒らすタリバンは、国民の声にも耳を傾けようとせず、蛮行を改める気配もない。英国のシャブナル・ナスミ(元アフガン難民担当アドバイザー)が女性の権利を求めていたザリファ・ヤコビが逮捕され、他にも多くの女性たちも連行され行方不明だとツイートしている。

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それに関連して、アフガニスタン・インターナショナルニュースが「国連弁務官がヤコビを含む5人の女性活動家の釈放を要請した」と伝えている。(ツイートを表示

 このような状況の中でも、女性たちは怯まない。北東部のバダフシャン州では、女子学生たちが大学の門を叩いて学業再開を求めている。その姿と女生徒を蹴散らすタリバン兵の映像をアフガニスタンインターナショナルニュースが報じた。


カブールでは、デモ行進する女性たちが「人口の半分の女性を家に閉じ込めるのは許せない。私たちは家畜ではなく人間だ」と抗議し、脱ぎ捨てたブルカを踏みつける映像がツイッター上に投稿されていた。

 女性を自宅に閉じ込めるジェンダーアパルトヘイトに抗議して、二人の女性が、「私が泣いても嘆願しても、そして死んでも世界は気にしません。私たちは檻から抜け出せる日を願うばかりです」と歌う姿を、前述のシャブナム女史が紹介している。

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ジャーナリストが、「タリバンが目の前で母親が殺された」と涙ながらに話す少女を紹介する映像レポートもあった。

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 女性たちの置かれた苦難に、元アフガニスタン議会議員のファージィア・コフィは、トルコのエルドアン大統領に面会しアフガニスタンの窮状を訴え変革への協力を要請した。「タリバンが私たちの美しい宗教を偽って伝えないように、新しい政治プロセス(包括政権への)開始に尽力して欲しい」と嘆願した、とアフガニスタン・インターナショナル・ニュースが報じている。

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 希望の感じられるニュースもあった。9月30日に起きた、カジ教育センターでの模擬試験中の自爆テロで怪我をしたファティマ(以前のメッセージで紹介)が、カブール大学のコンピューターサイエンスコースに合格したと、AmuTVが伝えていたのだ。彼女の未来が明るく切り開かれることを願うばかりだ。

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ファティマの朗報の前には、「午前8時ニュース」が、ガズニ州に700人が集まって大学入試の統一試験(コンテスト)が開かれたと伝えていた。学舎横の広場に集まった学生たちはコンテストを通して、自分の未来を切り開こうとしている。その姿にアフガニスタンの希望が垣間見えた。ただ、現在、女子の中高が停止されているため、来年以降、女子のコンクールが行われるかわからないというツイートもあった。

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 大学受験に関連した映像で、一枚の写真が忘れられない。大学入試の結果を待つ女子学生が笑顔で試験票を見せている。彼女は試験に受かったのだろうか。もし、受からなかったとしても来年以降も機会があったら再び挑戦して欲しい。ファティマが負傷に負けずに合格したように。

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 絶望が支配する中で、どう希望を紡いでいくのか。その答えは、アフガニスタン人だけでなく、私たち一人一人の中にある。決して諦めることなく、苦難の中でも笑顔を持ち続けたマスード。希望を失わなければ、必ず、未来は見えてくると、彼は自らの生き方を通して多くの人に教えてくれた。だからこそ、彼の存在は人々の心から消えることはないのだと思っている。


  2022年11月6日   長倉洋海

「希望を失ってはいけない。
それは、他のどんなものより大きな損失だ。
希望さえあれば、他のどんなことも解決に向かって進んでいける。」
(マスードの言葉。『マスード 伝説のアフガン司令官の素顔』マルセラ・グラッド著より)




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