「今日のメッセージ 2022/10/10」
ハザラ人の女子学生が、模擬試験中の自爆テロによって100名以上死傷した事件。アフガニスタンだけでなく、世界からも強い非難の声が上がっている。
amuTVでは、追悼集会に集まった同年代の女性たちの姿と声を報じている。(ツイートを表示)
首都カブールばかりか、ヘラートでも、バーミヤンでも、ガズニでも、カピサでも抗議デモが起き、中にはまだ幼い女の子も「Stop Hazara Genocide」と抗議の声をあげている。
★ガズニでの抗議 (ツイートを表示)
★カピサでの抗議 (ツイートを表示)
★ヘラートでの抗議 (ツイートを表示)
ハザラ人やタジク人ばかりでなく、タリバンの多くを構成するパシュトゥーン人の女性たちも虐殺に抗議し、連帯の声を上げた。 (ツイートを表示)
世界の主要都市でも人々は抗議に立ち上がっている。添付写真はウイーンだが、オーストラリアのメルボルンとシドニーでも、カナダのトロントでも、イタリアのローマでも、ドイツのベルリンとフランクフルトでも、米国のシカゴでも、人々はプラカードを手に抗議の声を上げている。(ツイートを表示)
★ニュージーランドで (ツイートを表示)
★シカゴで (ツイートを表示)
★ローマで (ツイートを表示)
★カナダ・トロントで
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★シドニーで (ツイートを表示)、 メルボルンで (ツイートを表示)
★ベルリンで (ツイートを表示)
2001年に自爆テロで斃れたマスードの弟で、元英国大使のワリ・マスードは「恐ろしい攻撃の責任者は誰ですか。何十年にも渡ってアフガニスタンを恐怖に陥れてきたタリバンは、同じテロリスト仲間のせいにしています」とタリバンを批判している。(ツイートを表示)
国内外からの強い抗議と非難にもかかわらず、タリバン内の有力者やパシュトゥーン人指導者にはいまだに「ハザラ虐殺」を公言している人がいるのだ。添付の映像のように「テロや暴力」を容認する人がいる限り、ハザラやタジクへの迫害は止むことはないだろう。この人物はタリバンの戦闘員を前に「自分は数千のハザラを殺す」と演説している。(ツイートを表示)
北部のタハール州では、タリバンの威嚇によりタジク人の300家族が家を追い出され、その住居にパキスタンからやってきたパシュトゥーン人「クチ」(遊牧民)が入っているという。(ツイートを表示)
国民抵抗線の外交部長アリ・ナザリーは「タリバンが北部ではISISと協力してテロ活動を続けている」とツイッターで報告している。ISISが、タリバン内最大勢力のテロリストであるハッカニとパキスタンを通して、タリバンと深くつながっているのは明らかだ。(ツイートを表示)
以前、このメッセージでも紹介したオーストラリア人ジャーナリスト、リン・オドネル。彼女はタリバンに脅迫され脱出を余儀なくされたが、ツイッターで「世界の政府と国連がタリバンを権力の座に置いている」と世界各国の対応を非難している。(ツイートを表示)
彼女が非難する一つに、米国の対応がある。先日、米国人の人質と引き換えに、米国はタリバン創出に加わったかつての麻薬王をタリバンに引き渡すなど、タリバンを自分たちの交渉相手として認知している。また、米国CIA副長官がドーハでタリバンと「秘密会議を持った」とアフガン・メディアが報じている。米国にとって、タリバンは「人々の抑圧を加える政権」というよりも、「地域における米国の権益を確保するための唯一の交渉相手」なのだ。
隣国イランでは、20代の女性が「ヒジャブ(スカーフ)の被り方が悪い」と連行され死に至った事件への抗議が今も続き、すでに90人以上が治安警察との衝突で亡くなっている。各地で焼き討ちなどが発生するなど、いまだ拡大の一途を辿っている。その抗議デモに、治安警察の一部も加わり始めたというニュースに驚いた。(ツイートを表示)
アフガニスタンで人々がソ連軍の侵攻に抵抗していた時代も、タリバンの抑圧時代(1996 - 2001年)にも、一貫して同じシーア派のハザラ人を助けてきたイラン・イスラム政権が、近年、タリバンのハザラ弾圧にも声を上げず、アフガン難民を追い出したり迫害するなどの政策を取り始めたことに、私は疑念を抱いていた。欧米との対立を抱える中で、タリバンと問題を起こしたくないという政治的思惑が最優先されている。かつてのイラン革命で、親欧米専制であった王政打倒を掲げていた頃の理念はどこへ行ったのだろうか。
国民の声を聞こうとしない政権は、いつか倒れる。それも内部から崩壊するか、国民によって倒されるかだ。添付のツイッターで見つけた風刺画にはロシアとイランが描かれているが、いずれ、ここにタリバンが加わるのは時間の問題だろう。もっとも、現時点で描かれていても何の不思議もないのだが。
現在、アフガニスタンの反タリバンの動きはイランほどの大規模ではないが、それでも確実に変化が現れている。デモ隊に少数ながら男性が加わり始めたのだ。これは画期的なことだと思う。今は道路から見ているだけの人々も、いつかデモ隊に加わる時が来る。その時、タリバンの終わりが始まる。
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女性でも男性でも、デモに加わることは命がけだ。上記のデモでも捕まった人がいるという。だが、人々は「自分は倒れても現状を変えるためなら仕方ない」と、捨て石になるつもりで加わっているに違いない。
BBCのインタビューに答える女性学生は、「これからもっとたくさんの人が死ぬかもしれない。それでも、私たちは最後には勝利する」と覚悟を決めたかのように答えている。(ツイートを表示)
添付の写真は2年前、パンシールのサッカー競技場で大学入試の共通試験を受ける女生徒たちの写真投稿。アフガニスタンの女生徒たちは、再びこのような時が来るのを心に思い描きながら、不条理に対して立ち上がろうとしているのだろう。
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最後に、ツイッターで見た「鳥かごから鳥を解き放つ映像」を紹介したい。
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「Freedom 」から始まるこの投稿文。毎週末、50羽ほどの鳥を市場で買っては鳥に自由を与えるためにそうしているのだという。私もこのカゴの持ち主のように「アフガニスタンの人々が檻から自由に解き放たれる日」を待ち望んでいる。
2022年10月10日 長倉洋海
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