アフガン情勢に関するメッセージ
2022年9月18日


「今日のメッセージ 2022/9/18」

 タリバンは、パンシール渓谷の国民抵抗線戦を壊滅させようと、多数の軍事車両で1万のタリバン兵や、パキスタンやアラブからの過激派メンバーを送り込んだ。タリバンは勝利できなかったようだが、タリバンが捕虜とした抵抗戦線の兵士を処刑するシーンがツイッターに投稿されている。手を縛り上げた5人ほどを並べ、背後から機銃掃射している。倒れた兵士にさらに「神は偉大なり」と叫びながら、銃弾を撃ち込むという酷いシーンだ。


〈捕虜の抵抗戦線兵士を背後から機銃掃射で処刑するタリバン。ツイッターより〉

こうした映像を流布させることで、国民を恐怖で縛りあげようという戦略なのだろう。無慈悲で酷い処刑に「神」を持ち出すことはイスラムへの冒涜としか言えない。彼らの心にはアラーもコーランも存在しない。単なる無法者、ならず者の集団であることを自ら暴露している。フランス大使のデイビット・マチノンは「凶悪な戦争犯罪の映像の流布は、明確なテロ戦略に従っているものだ」と非難している。
この動画は過激なものです。閲覧にはご注意ください。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチも「パンシールでの非拘束者の処刑は戦争犯罪だ」と強く憂慮している。(ツイートを表示

★ツイッターには「すぐに戦争犯罪の調査を」という声が多く上がっている。(ツイートを表示

★「アムネスティー・インターナショナルはゴール州でハザラ人の家が襲撃され男性4人、女性2人が拷問の末に殺されたことを報告している。」と報じるアフガニスタン・インターナショナルの投稿


北部のタハールでは、パシュトゥーン人遊牧民が民家を占領する事件が相次ぎ、タジク住民が鍬や棒を持ち、それをやめさせようとしようとしたが、銃を持ったタリバン兵がそれを阻止している。先祖から受け継いだ自分たちの拠り所である住居を失うまいとの、住民の必死の表情が胸に迫る。

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 タリバンの出身母体であるパシュトゥーン人居住地域でも、女性たちが果敢に「学校再開」を訴えてデモを敢行。その映像にも私は心を揺さぶられた。国民抵抗線の外交部長アリ・ナザリーをはじめ、多くの人がリツイートしている。(ツイートを表示


 一方で、アフガニスタン・インターナショナル・ニュースは、数百人のISISがテロ攻撃のためにクンドゥスやタハール、バダフシャン州に送りこまれている情報があると報じた。
しかし、自らテロを敢行するばかりか、過激派テロ集団をも支援するタリバンに対し、米国は資産凍結を行ってきたが、その一部をタリバン経由ではなく、別途基金を創設し、人道支援に役立てると発表した。
日経新聞記事

国連の人権委員会の場では、女性活動家のセラジ氏がアフガニスタンの女性のために、と現状の変革を強くアピールしている。

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 国民抵抗戦線を率いるアフマッド・マスードは、オーストリアのウイーンで、新しいアフガニスタンを目指すための指導者・有識者会議を開催した。記者会見でアフマッドは、「私たちが建設しようとしているのは、全ての人にとっての家。私が互いに自由で安全に、平和に暮らすことができるアフガニスタンです」と話した。

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ウイーンの会場近くには大勢のアフガニスタン人が集まり、アフマッドへの支持を訴え、タリバンの悪行を非難した。

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 アフガニスタンは激動の時だが、これからもっと激変するだろう。大きな変化なしに、真に自由で平和はアフガニスタンが創造されるはずがない、と私は思う。戦いはいけないと言う人もいるが、タリバンが平和的な抗議や意思表示では全く応じようとしない現在にあっては、「抵抗」と「対話と交渉」の二本の柱があって初めて世界が動き、人々が動き、歴史の歯車がやっと回り始めるのかもしれない。それまでなんと多くの血が流れ、人々は悲しみの慟哭を繰り返さなければならないのだろう。


★戦いで倒れた同士を抵抗戦線の兵士が追悼する写真があった。

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同時に、我が子を抱きながら、ギターを爪弾く若い父親の映像があった。
どちらの映像も、「平和とは何か」、「どうすればそれを掴み取ることができるのか」と問いかけてくる。
 その答えは、目を瞑っていては決して見えてこない。辛いかもしれないが、人々の涙と憤りに向かい合うその先に、おぼろげに答えが見えてくるのだろう。


  2022年9月18日   長倉洋海




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