アフガン情勢に関するメッセージ
2022年8月20日


「今日のメッセージ 2022/8/20」

 「アフガニスタンの魂は、滅びることはない。」—私はその思いを強くしている。武装勢力タリバンが首都を制圧して一年。車を連ね、銃を掲げ、「外国勢力から国を解放した。国民は我々に感謝すべきだ」と自賛するタリバン。しかし、AP通信は「国民の多くが貧困と飢餓に追い込まれている」と、悪化するばかりのアフガニスタンの窮状をレポートしている。(AP通信記事へ

 国民抵抗戦線(NRF)の外交部長アリ・ナザリーは「8月15日の夜、国民抵抗戦線のリーダーであるアフマッド・マスードが、集まった宗教学者、長老、女性人権活動家、軍事司令官たちの前で、これからも闘争を続ける決意を述べた」と伝えている。「選挙、言論の自由、女性の権利、多民族からなる政府を通して、テロと腐敗に抗する態勢を作り上げるため」とも述べている。(ツイートを表示

 NRFの司令官の1人は、「この国は豊かな文明の一部であり、私たちはその中で名誉ある地位を占めている。偉大な個性が地域の各分野に貢献してきた。しかしここ数百年、外国の侵略や内部抗争でそれらの伝統が壊されてきた。この20年、タリバンによる抑圧、処刑、投獄などで多大な犠牲を強いられてきたが、いま、テロリストグループと戦い、国民を守るために戦う」と決意を述べた。(ツイートを表示


 女性代表者の1人は「国家の尊厳を回復し、国家の利益を確かなものとして、領土の保全と隣国との相互不介入を確かなものとし、友好を深め、相互に尊重し、世界の問題への積極的な政策をとる」と高らかに宣言した。(ツイートを表示




〈山岳地帯の抵抗戦線兵士。ツイッターより〉


〈山岳地帯の抵抗戦線兵士。ツイッターより〉


 国民抵抗戦線は、パンシール渓谷やアンダローブ地区などで攻勢を強めている。タリバン側は、公式には一切その戦いを認めていないが、多大な犠牲を出しているのは間違いない。しかし、これまでもお伝えしてきたように、タリバン側は民間人を連行し、盾にとる戦法をとっている。(ツイートを表示

そればかりか、パンシールでは「タリバンが少女たちに結婚を強要、家族が反対すれば拷問され、地域から追放されている」と女性が証言するビデオが投稿された。(ツイートを表示


 制圧から1年となる8月15日の2日前、首都カブールでは、女性たちが「仕事を、パンを、自由を」と叫びながらデモ行進をした。(ツイートを表示


すぐにタリバンが威嚇射撃を始めた。威嚇が始まった瞬間にも携帯で撮影するデモ参加者の女性。銃にも立ち向かう気持ちで抗議をしているのだ。(ツイートを表示


これらの映像を見た、亡命中のモカデサ・ユーリッシュさん(前・副商業大臣)は「もし今でも被害者の視点からアフガニスタンの女性を見ている人がいたら、このビデオを見せてください」とツイートしている。

 このデモに参加した女性の1人は外国放送のインタビューに、「携帯電話を取り上げられ、殺されるかと思った。しかし、私は抵抗をやめない。1人になっても続ける」と話した。
その一方で、街頭で抗議するための外出もできず、悶々とする女生徒たちもいる。「学校に通えなければ、結婚させられる。私は少女の花嫁にはなりたくない。タリバンの幹部の娘が海外で勉強しているのを知っている。彼女たちに教育機会があるのに、なぜ私たちにはないのか。才能を発揮するチャンスが欲しい」と、女生徒たちは苦しい胸の内を時事通信の記者に話した。(時事ドットコムニュース

同じように、「この一年で全てが変わった」という女生徒の嘆きを、The National Newsがツイッターの動画で伝えている。「学校なし、友達なし、外出なし: 若い女の子の目を通して見たカブールでの生活

 女生徒の通学が禁じられるばかりか、各地でハザラ人の祭りやモスクでの礼拝を狙った爆弾テロが続いている。昨日もカブール北部のモスクで爆発があり、死者21人、負傷者33人と報告されている。犯人はすぐに見つけるとタリバンは発表したが、今まで犯人が捕まった試しがなく、ハザラの人々を恐怖に追い込んでいる。人々を戦慄させることがタリバンを含むテロリストたちの目的なのかもしれない。(読売新聞記事

 爆発ばかりでなく、タリバンによる暴力は、もはや日常茶飯事だ。
お茶の入ったグラスを横におき、少年たちの手足を押さえて棒で殴る。代わる代わるいたぶっては笑うタリバン。ツイッターに投稿された動画だが、タリバンが仲間に見せるために撮影されたもののようだ。暴力行為だけでなく、さらに動画を撮影するその信じられない神経が、タリバンの本質だ。(ツイートを表示

 アフガニスタン全土で、タリバンへの憤りが人々の心に滾っていると、私は感じる。人々が声を上げ、変革を求め、動き出す時が近づいているのかもしれない。
タリバンの登場に絶望し国外に逃れた人もいるが、国内に残って戦おうとする人がいる。国外にあってもアフガニスタンを忘れず、何かできることはないかと方法を探している人がいる。
 2021年からアフガニスタン駐日大使を務めるアブダリ氏は、タリバンからの給与の支払いがない中でも自分の考えを貫いている。職員を減らし、在日アフガン人の支援活動によって大使館としての業務を続けている。(NHKニュースウェブ記事

 この一年で、アフガニスタンではたくさんの血が流され、大地に染み込んだ。人々の涙は今も尽きることがない。しかし、それらは決して消え去ることなく、アフガニスタンの先人たちの作り上げた文化と伝統、そして、先人たちの思いと合流して大きな流れになっていく。私たちが、同じ地球人としてその思いを汲み取ろうとするとき、両者は心でつながることができる。

 その思いとは、決して「敗れることのない魂」。マスードも、斃れた人々も失なわなかった「不屈の精神」だ。
旧政権の政府軍兵士が独立記念日(8月15日。英国の支配からの解放)を祝って踊る映像をツイッターで見つけた。それを投稿した人は「いま、貴方達はどこに?生きているの?食べるものはあるの?何人が拷問で死んだの?何人が生き残っているの?」と詩を添えていた。(ツイートを表示

 生き残り、不屈の魂を持った人たちが今も戦いを続けている。元政府軍の抵抗戦線司令官が「神を信じ、テロリストから国を解放するための戦いだ」と兵士たちに訓示している動画も投稿されていた。


 アフガニスタンの独立記念日に伝統楽器ルバーブを奏でる男性の動画。音色は聴く人の心の有り様でさまざまに姿を変え、心に響くに違いない。私には「道半ばで斃れたが、いつまでも心に残る友たちへの哀悼歌」に聴こえた。敗れざる魂への歌、に。

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    2022年8月20日   長倉洋海






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