アフガン情勢に関するメッセージ
2022年7月23日


「今日のメッセージ 2022/7/23」

 アフガニスタンの苦難は続いている。中でもタリバンによる暴力と蛮行は、とどまるところを知らない。
『Independent Persia(独立ペルシャ)』デジタル版は「裁判なしに数千人の市民が投獄された」と伝えている。
ツイートを表示

トロ・ニュースのジャーナリスト、アニサ・シャヒードはその記事を取り上げ、「刑務所に投獄されている息子に面会できた母親が『食事は1日1回、日に拷問が3回。病気になっても薬も与えられない。身体障害者になる者も多くいる』と話した」とツイートしている。(ツイートを表示

ラジオ局の女性レポーター、サラジーは家の前でタリバンに殴打され意識不明となり、病院に運ばれた。

〈ラジオEnikassで働いていた頃の写真。ツイッターより〉(ツイートを表示

パンシール州では女性が撃たれて亡くなったことがツイッターに投稿された。投稿には「パンジシールのタリバンは人々を狩り、楽しみのために印を付けます。」と書かれていた。
※閲覧にご注意ください。 (ツイートを表示

また、アンダローブでは男性が家族の前で、タリバンに首を落とされたという投稿があった。
※ボカシが入っていますが、閲覧にはご注意ください。 (ツイートを表示


 これらの他にも、たくさんの暴行シーンが投稿されている。これまでのメッセージでも言い続けているが、私がどうしても理解できないのは、タリバンが人々に暴行を加えながら、笑い、楽しんでいることだ。ジャーナリストのムフタル・ワファイは「タリバンは誇らしげに人々の拷問のビデオを撮り、それらをオンラインで公開している」とツイートしている。 (ツイートを表示
タリバンは暴力を悪いこと、あるいは仕方ないこととさえ思っていないに違いない。そして、それらを投稿するのは「逆らえば、こんな風になるぞ」という見せしめのつもりなのかもしれない。

 それでも、タリバンに対し抵抗を表明し続ける人々がいる。
タリバンの政策の不備を申し立てる女性は、「家族が病気になって困っている」「イスラムの国を標榜しているのに、様々な問題を放置している」とタリバン幹部を前に、はっきりと抗議している。(ツイートを表示

★「タリバン禁止」と手のひらに書いて抗議する女性たち。(ツイートを表示


 世界各国や世論がタリバンの蛮行を止めることができていない中で、唯一、戦線としてタリバンに抵抗しているのが国民抵抗戦線(National Resistance Front)だ。その外交部長のアリ・ナザリーは「タリバンはパンシールで抵抗戦線への攻撃に失敗し、北部アフガニスタンで戦略的敗北に陥っている」と述べている。
ツイートを表示

ツイッターの投稿では「数千人のタリバン兵が車両と武器を持ってパンシールに入り抵抗勢力と対峙した後、兵は殺され、車両は破壊されました。」との戦況が伝えられている。(ツイートを表示

しかし、確かに各所のゲリラ戦ではタリバンに打撃を与えているが、未だ点が線となり面となるには至っていない。山岳地帯で食料に事欠き、山菜を食べて飢えをしのいでいる抵抗戦線の兵士姿が投稿されている。

ツイートを表示


 満足な補給がないまま戦わざるを得ない状況の中で、彼らの心は折れることがないのだろうか。その苦境を象徴するように、ツイッターには、故マスードを懐かしむ声が上がっている。

★「ここにあなたがいればいいのに…」というツイートに添付された写真。(ツイートを表示


マスードの顔写真を添付し、「あなたは去りました。私たちはあなたがいなくて寂しいです。どこを見てもあなたのことを思い出します。あなたは親切でみんなに忠実でした。私たちのリーダー」と書かれたツイッター投稿もあった。 (ツイートを表示

 マスードは、世界からの支援もない孤立の中で、自らの信条、思想に従って戦った。他力に頼るのではなく、自力本願。それは自分との闘いだった。愚かな自分や弱い自分と戦うことは「大ジハード(聖戦)」と言われ、一方、迫ってきた敵との戦いは「小ジハード」と言われる。イスラム世界では、前者は後者より価値が高いとされている。自分に打ち勝つこと、それが第一に大切なことなのだ。
リーダーが自ら苦難を背負うことをして初めて、人がついてくる。マスードは、抵抗戦線の若きリーダー、アフマッドに、そんなリーダーになってほしいと見守っているのではないかと思う。

 内なる神を持ち、その眼を意識しながら生きていたマスード。「懸命に生きれば、神はそれを見て喜んでくれる」とも話していた。人は心の内に自分を支えるものを持って初めて、生きることができる。いや、生き抜いていくことができるはずだ。

 アーティストの投稿写真に心が動いた。「オフィスでとった写真。わたしは革命の種の実、と呼ぶことにしました」と書かれていた。
鉢からはまだ芽は出ていないが、後ろの壁のひび割れが、まるで伸びた枝のように見えないこともない。
芽を出す力は「希望を失わない心」なのだろう。

ツイートを表示

 人は様々なものとつながることができる。神ばかりか、宇宙をも内に抱くことができる。そして、希望を持ち続けることができる。それが、マスードやイスラム戦士から私が学んだ最も大切なものの一つだ


   2022年7月23日  長倉洋海






[アフガン情勢に関するメッセージ一覧]へ
[長倉洋海トップページ]へ