「今日のメッセージ 2022/7/1」
いよいよ7月。昨年、ガニ大統領の国外脱出と武装集団タリバンの首都入城があった8月15日が近づいてきました。この1年近くの間、タリバンは包括政権樹立の要求も、復学を望む女生徒や仕事を再開したいと訴える女性の声にも耳を貸さず、国民の声は、一切、その政策に反映されることはありませんでした。
★「教育を、道路を、病院を」と訴える人々。ペンパス教育キャンペーン (ツイートを表示)
6月30日、首都カブールのロヤ・ジルガ・ホールではウラマー(イスラム法学者またはイスラム知識人)総会が行われました。「国民に選ばれた者たちが集まった」とタリバン広報官は述べていますが、私は「選挙も実施されていないのに」と思います。
第二の都市ヘラートから参加したウラマー、アンサリ氏は「アフガニスタンの現在の安全保障レベルは世界でも比類のないものであり、私たちはシステムの存続のために協力する必要があります」と話した、とKABUL NEWS TVが投稿しています。 (ツイートを表示)
しかし、その後、会場への攻撃があったことをAamaj Newsが緊急ニュースとして伝えています。「国民抵抗戦線広報官が彼らの特殊部隊が攻撃したと述べたが、タリバンはそれに触れていない」と、銃撃戦の音声動画とともに投稿しています。 (ツイートを表示)
アンサリ氏は襲撃の後で、「ウラマーは『タリバン政府に反対する者は斬首する』というファトワ(イスラム法学に基づく布告)を出すべきだ」と話しています。なんでも自分たちに都合よく言い繕う、タリバンの身勝手な体質がよく伝わります。(ツイートを表示)
元副大統領アマヌラ・サーレは「反対者は斬首」という言葉に、「(反タリバンを許さないということなら)百万人以上を斬首しなければならならなくなるでしょう」とツイートで反応しています。
そのタリバンは、前回お伝えした北部バルカブの反タリバン蜂起に対し、増援部隊を送り弾圧、100人以上のハザラ市民を殺したと報じられています。そのため、数千人以上のハザラ人住民が山に逃げ込み、緊急的な援助を必要としているようです。 (ツイートを表示)
住民の命乞いすら許さず非道な弾圧を常とするタリバンのもとでは、「国民和解」は実現できそうもありません。
ツイートで投稿された写真には、遺体のように見える女性が横たわっている姿が写っています。
バルカブでは電気通信手段も切断されたと書かれていました。 (ツイートを表示)
下の青年は昨夜、タリバンに連行されましたが、その容疑も明らかではなく、「タジク人だから」ではないかとツイートされています。 (ツイートを表示)
タリバンのこれらの行為に対し、国民抵抗戦線外交部長アリ・ナザリーは「国際社会の沈黙は、タリバンに、ジェノサイドが許容されるという誤ったメッセージを送っている」と警鐘を鳴らしています。タリバンは、イスラムにおいても、民主主義的な意味合いにおいても、真っ当な価値基準を持っていないように思えます。自分たちの権力を失わないために邪魔な存在を抹殺したり、人々に恐怖感を与え支配するのが目的のようです。西側社会もイスラム世界も、倫理的な観点からこうした許されない行為を止めるために、もっと強い態度で臨むべきだと思います。 (ツイートを表示)
先日、ホスト州とパクティカ州で地震があったばかりで、今も救援を待つ人々がたくさんいます。その救助を第一義に考えることなく、タリバンが強く訴えているのは国外資産の凍結解除です。(NHKニュースWeb)
それでは順番が逆です。国際社会が求めてきた包括政権の樹立、女子生徒の復学や人権尊重を放ったままで、世界はタリバンを認知できるはずがありません。が、しっかり見ていなければ、どこかの国が抜け駆け的に、あるいは自国の権益のために、タリバンを認めてしまうかもしれません。
しかし、仮にそうしたことがあったとしても、アフガニスタンの人々は諦めません。自分の国で自由に生き、仕事をし、学び、家族と平和に暮らすことができるアフガニスタンを、心から願っているからです。人々の表情には、自分がその礎となり、信念を貫こうという決意が垣間見えます。
★タリバンの監視をかいくぐり、秘密の学校で勉強を続ける女生徒たち。自分で掴みたいもの、叶えたい未来を実現するために、危険を覚悟で学んでいる姿に打たれます。ツイッターより
★学校がなくても教師が足りなくても、「教わりたい」と願う生徒がいる限り教えよう、という決意を持った先生がいる。(ツイートを表示)
★ヒンズークシュ山中を移動する国民抵抗戦線の兵士たち
人々が願うのは平和、家族が一緒に暮らせる日々、世界と仲良くできる国。
何よりも、個人の尊厳が守られる国です。
今日、ツイッターにパンシールの川で水遊びする子どもたちの動画が投稿されており、それを見て心が和みました。(ツイートを表示)
人々は、こんな幸せな時間を守ろうとして闘っているのではないかと思うのです。
2022年7月1日 長倉洋海
[アフガン情勢に関するメッセージ一覧]へ
[長倉洋海トップページ]へ
|