アフガン情勢に関するメッセージ
2022年6月24日


「今日のメッセージ 2022/6/24」

 アフガニスタン東部パクティカ州とホスト州で22日未明、マグニチュード5.9の地震がおき、死者が1000名以上、負傷者は1500人以上という報道がなされている。

〈写真:ロイター通信〉
共同通信記事  ★時事通信記事

 地元のトロ・ニュースは「タリバン暫定政権は捜索と救助活動を終えたと話しているが、まだ大勢の人が瓦礫の下敷きになっているようだ」と伝えている。国際的な支援要請はまだ行われていないようだが、国際機関や周辺国家が迅速に活動できないのだろうかと思う。「米国は支援活動について話し合いをまもなく開始する」という報道もあったが、現場のすぐ隣はパキスタン。何か援助する術がないのだろうか。


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崩れた家の前に佇む少女の映像がツイッターに上がっていて心が痛んだ。
かつてソ連軍が爆撃した村で、似たシーンを見たことがある。戦火で家と家族を失って放心状態にあった人々と、この少女の姿が重なった。
 パクティカ、ホストの両州はパシュトゥーン人が多く住む地域だが、タリバンの「捜索は終了」という談話が気になった。地震直後のツイッターには「1998年、バタフシャンでマグニチュード6.9の地震が発生し、4000人以上が亡くなった時、タリバンのオマール師が『(人々がタリバンに抵抗していたので)神の怒りだ』と語ったことを私は忘れない」というものがあった。(ツイートを表示

タリバンが今回の地震をそのように捉えているわけではないのは自明で、この投稿ではタリバン暫定政権が10億アフガニー(日本円で約15億1千万円)の支援金を拠出すると言っている、とのツイートも添付している。いずれにしても、助かる命ならなんとしても助けてほしいと願う。

 こうした災害や事故で亡くなった場合、「神の決めた運命だから」という家族と出会ったことがある。私が支援している山の学校の生徒だったモハマド・ハーン少年(当時4年生)が、対ソ戦時代に家の土壁の中に隠されていた弾薬があり、そこにランプが倒れて火がつき爆発して亡くなった時だった。私のお悔やみの言葉に、父親は「神の決めたさだめだった」と答えた。家族はそう思わなければ、怒りや悲しみをどうしたらいいのか、神の定めと自分を納得させるしかなかったのだろう。その悲しげな表情が忘れられない。

 タリバンは、自らが打ち立てた政府を「アフガニスタン首長国が誕生したのは『神の御心』である」と言って憚らないが、多くの人がその有りように疑問を持っている。
そして、「神がお決めになったことだから」と諦めるのではなく、自分が捨て石になっても子どもたちのためにこの国をなんとか変えたいと願っている人々がいる。そのひとつである国民抵抗戦線(NRF)の外交部長アリ・ナザリーは、今回の地震について「これはアフガニスタンのすべての市民にとって困難な時期であり、私たちは民族の所属に関係なく、お互いに共感と人間性を示すことによって私たちの絆を強化しなければなりません。抵抗戦線はすべてのアフガン人のためにあります。」と国民に呼びかけている。(ツイートを表示

 そして、これまであまり大きな動きを見せなかったハザラ人(中央高地を本拠地とする蒙古系民族)が、国民抵抗戦線の戦いに参加するなど、タリバンへの抵抗を強め始めた。北のサーレポル州のタリバン現地司令官マウラウィ・メハディが反旗を翻し、それに各地から多くの戦闘員が合流している。


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身を潜めていた旧政府軍兵士も加わり始めているというツイートもあった。

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ハザラ人は、この国の主要民族パシュトゥーン人に最も卑しめられ、苦難を強いられた民族だ。このメッセージでも、何度もハザラ人へのジェノサイドについて伝えてきた。彼らが立ち上がり、抵抗戦線に合流するなら、中央高地や北部だけでなく首都カブールでもタリバンにとっての大きな脅威となる。現実につい先日、カブールでタリバンが攻撃される映像がツイッターに投稿された。(ツイートを表示

同じくカブールのハイリ・ハナでの何者かによる攻撃で、タリバン兵死亡を伝える投稿もある。
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この事件後、タリバンはハイリ・ハナを封鎖、一軒一軒をしらみつぶしに捜索しているという。
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 抵抗戦線だけではない。ジャーナリストは報道でこの国の有り様を問い続けている。その代表格ともいえるテレビ放送「トロ・ニュース」。そのトロ・ニュースが英国のOne World Media Special Award を受賞したことを、アフガニスタンの元国家和解高等評議会議長 Dr.アブドラー・アブドラーのツイッターから知った。
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 そのDr.アブドラー・アブドラーも国内に踏み留まり、国際機関関係者や外国要人と会い、政治家としての役目を果たそうとしている。彼らばかりでなく、政治、文化、医学、科学、スポーツ、あらゆる分野でアフガニスタンを変えたいと願っている人がいる。その一人一人が声をあげ、一つの大きな流れになった時、この国はあるべき方向に舵をとることができると思う。

 国民抵抗戦線のリーダー、アフマッド・マスードが「世界は私たちをサポートしていない。しかし、それを待つつもりはない。私のそばには神がいます。私は神を信じ、預言者の教えに従って、人々と家族を守る戦いをしています」とメッセージを送っている。


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 心ある人々は見ている。所業の一つ一つを。そこに、人の本性が現れるからだ。私が長く取材したマスードが、今も多くの人に愛されていると思えるツイートがあった。(ツイートを表示

 「英雄マスードはいつも私たちの心にあり続けている」というコメントとともに、マスードの名を冠した小道が在るパリのシャンゼリゼ公園の映像が紹介されていた。パリ市長が、ソ連軍・タリバン・アルカイダと戦ったマスードへの敬意を表して名付けた小道。
いつか、その通りを、心に宿るマスードと対話しながら歩いてみたいと思っている。多くのアフガン人がそう思っているように。


    2022年6月24日 長倉洋海






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