アフガン情勢に関するメッセージ
2022年6月17日


「今日のメッセージ 2022/6/17」

 これまでのメッセージで、NRF(国民抵抗戦線)の攻勢が強まりタリバンが地域の民間人を連行・殺害してきた、ということをお伝えしてきました。今度は山の学校の卒業生ナイマの父親と兄2人が逮捕され、カブールに連行されたという知らせが入ってきました。コンロと燃料を持っていたのを「抵抗戦線に渡すものだろう」と嫌疑をかけられたようです。3週間がたっていますが未だに釈放されておらず、家族はとても心配しています。
 タリバンの常態化した人権侵害と暴力を、「戦争犯罪」として世界の政治家、学者や研究家、文化人らが国連事務総長に当てて公開書簡を発表したことが、6月6日、独立系新聞『Hasht-E Subh』の電子版で公表され、その訳文が6月15日、アフガンニュースレター(ウェッブ・アフガン)に掲載されました。パンシールや北部の状況が詳しくわかると思うので、是非ご覧ください。
(タジク系住民の人権状況への対処を求める公開書簡)

 公開書簡には、いくつものビデオ情報や現地での証言などを材料としながら、タリバンの地域封鎖、住居破壊、電力停止、人権侵害、アルカイダの関与、ISISとの協力関係などを国際法違反として厳しく告発しています。そして、調査団を現地に送るように述べています。国際的な大きなニュースなのに、日本の主要紙では未だ取り上げていないようです。アフガニスタンの戦争犯罪はスルーしようとしているのでしょうか。

 北部のパンシール渓谷では、連日、激しい戦闘が続いています。昨日、タリバンの武装ヘリが撃墜されました。BBCニュースが早速、そのことを取り上げています。

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ヘリコプターの乗員4名が捕虜になったようです。抵抗戦線の広報官アハマディが「私たちは彼らを捕虜として人道的に対応しています」とタリバンとの違いを強調するように話しています。
AFGHANISTAN INTERNATIONAL NEWSには、国民抵抗戦線がパンシール川本流にまで勢力を拡張している様子がわかる動画が登場し、本流に沿った集落や畑、四輪駆動車などが写っています。

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 一方、国民抵抗戦線のリーダー、アフマッド・マスードは欧米のテレビ局やアラブ産油国のインタビューに応じています。「包括政権に参加する用意はあったが、タリバンは受け入れなかった。私たちは人々、自由と平等、女性の権利と民主主義のために戦っています。私たちは自由の最後の拠点なのです」とインタビューの中で話しています。

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 北部タハール州の州都タロカーンではタリバン同士が衝突し、激しい戦闘が行われた模様です。
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 タリバンの無頼ぶりを伝える映像も投稿されていました、レストランでテーブルの上に足を投げ出している姿です。こうした輩が銃を持ち、人の生殺与奪の権利を握っているのです。アフガニスタンを長く取材してきて、礼儀正しく、心根が優しいのがアフガン人だとずっと思っていたのですが、この人たちは私のアフガン人規格から大きく外れているようです。

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 女子が中学・高校に通えなくなって1年近くになりますが、一人の少女の書いた絵がツイッターに上がっていました。背中のザックがアフガニスタンの三色旗の色とハートの形になっていることが切なく思えます。

〈「国連の皆様、どうして私たちの学校は300日もしまったままなのですか」と文章が添えられた絵。ツイッターより〉 (ツイートを表示

 子どもの気持ちを感じられない、子どもの未来を考えようとしない勢力に「未来はない」し、未来を託すこともできない。
3月にツイッターに上がった映像が忘れられません。パキスタンで独立運動をするバルチと戦いを続けているパキスタン官憲が、まだ幼い子どもを殴ったり蹴ったりして情報を引き出そうとしているもので、見るたびに胸が痛くなります。(ツイートを表示


★バルチの戦いの紹介(ツイートを表示

 戦争のため、大義のため、そして命令だからと言って、このようなことができる人間を私は決して信用しませんし、会いたくもありません。戦火の中でも、人間としてしてはいけないことを部下たちに強く言っていたマスードのことを思い出します。ソ連軍や政府軍の捕虜にも、少年スパイにも人間として接し、最後には彼らからの信頼を勝ち取りました。現在の戦闘の中でも、そうした精神が国民抵抗戦線の兵士たちに宿っていることを心より願っています。

 ツイッターには戦禍の中で苦しむ人々や子どもたちの姿が投稿されることが多いですが、一方で食べ物や果物の映像も紹介されています。

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 ヒンズークシの雪解け水で育ったメロンはとても美味しいです。日本では高級なメロンですが、アフガスタンでは安価で買うことができます。ランプの下でマスードと食べたメロン、戦場に向かう前の戦士と一緒に食べたメロン、どの味も忘れられない「私の人生の味」となりました。

下はアフガニスタンのパラウ。炊き込みご飯です。



干しぶどうと人参と一緒に炊き込み、中に肉の塊が入っています。大皿で出されるので、一人が鍋奉行よろしくその肉を手でほぐしてそれぞれの皿に振り分けるのです。それも、これも、全てがアフガニスタンの人々の精神を形作ってきた文化なのです。相手を不快にすることや自分だけが食べられればいいというのは、その精神に反したものと言わざるを得ません。いつかみなさんが平和になったアフガニスタンに行くことができたら、そのことを実感するに違いありません。(ツイートを表示

 辛く、悲しい中にあっても人は食べることで、生きていく元気をもらうに違いありません。人々が美味しく味わうことができた時代に早く戻れますように。

    2022年6月17日   長倉洋海








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