「今日のメッセージ 2022/3/7」
ロシアがウクライナにしていることー住居を攻撃し、民間人を殺し、大地を焦土とすることを目の当たりにして思ったのは、タリバンやミャンマーの軍事政権のように「なし崩し的にことを進め、自分たちの論理を正当化し、他を排除する悪」に強く声を上げなければ、ロシアのウクライナ侵攻のような新たな悪を生むことにつながっていく、ということでした。だからこそ、私はアフガニスタンで続く「悪の実態」をできる限り、伝えていきたいと思っています。
アフガニスタンでは、タリバンの勧善懲悪省が「ナウルーズ(ペルシャ式新年)はイスラムに反するので、その祝いの行事は認めない」と発表しました。「ナウルーズ」はペルシャ暦の新年のお祝いで、人々の生活と心に深く浸透している国民的行事です。日本の「お正月」に当たります。アフガニスタンの人々は親類縁者が集い、ごちそうを食べ、祝いの挨拶を交わすナウ・ルーズを楽しみにしてきました。それを禁じるというのです。
〈マザリシャリフのモスクでの祝いの様子。ナウ・ルーズを禁じることを報じたツイッターより〉
この決定には「文化的ジェノサイドだ」とツイッターにたくさんの声が上がり、国民抵抗戦線外交部長のアリ・ナザリーも「文化的アイデンティティを破壊するものであり、私たちは文化を守るためにも戦い続ける」と言っています。
★批判のツイッター投稿
先日、タリバン内務大臣で国際指名手配中のテロリスト、シラジュディン・ハッカニが集会で演説する中で「コーランを読み違えた」ことがツイッターで話題になっていました。(ツイートを表示)
彼はマドラサ(イスラムの神学校)で何を学んだのでしょう。テロの方法しか学ばなかったのでしょうか。コーランをよく理解していない人たちが「イスラムに反する」という発言をするのは全くもって不可解な話です。
大学教授であるモセニィ氏はテレビ番組で、「タリバンのイスラムとは何なのか。たくさんの人を軍事的目的のために殺すことこそ、イスラムに反する」と話したのちに逮捕されました。
★モセニィ氏がタリバンを批判したテレビ番組動画(ツイート)
国民には、音楽を聴いたり鳥を飼ったり、サッカーなどのスポーツを楽しむことを禁じているタリバン。先日は、結婚式の祝いの車列に「音楽がいけない」と発砲し、一人の青年が死亡しました。
一方で、タリバン幹部がボーリングをしている写真がツイッターに投稿されています。すぐ横では広報マンとおぼしき撮影者の姿があるので、「公開する価値がある」と判断したのでしょうか。「言っていることとやっていることが矛盾していることをわかっていない人たち」が、アフガニスタンを力で支配しているのです。
ボーリングはご愛嬌で済むかもしれませんが、笑って済まされない大変な事件が起きています。マザリシャリフでは2人の女性が遺体で発見され、カブール近郊では手を縛られ暴行された女性の遺体が見つかっています。
〈マザリシャリフで見つかった女性の遺体〉
★カブール近郊で遺体で発見された少女。投稿には『地元の人は、彼女はロープで縛られ、レイプされ、殺されたと言いました。 #Taliban政権がカブールに侵入した後、犯罪活動は日々多くなっています!教育を受けていないタリバンの指導者は、管理する知識を持っていません!』と書かれている。
(ツイートを表示)
※閲覧にはご注意ください※
★押し入った家で女性にも暴力を振るう動画もアップされています。
泣き叫ぶ子どもの声も聞こえる。(ツイートを表示)
★元女性議員は殴られ、家を壊され、お金を奪われ、車を破壊されました。「これがイスラムですか」と抗議の声をあげています。(ツイートを表示)
アフガニスタンの現実は目を覆いたくなるようなものですが、これを打ち破れるのは、やはりアフガニスタンの人々です。そして、その現実に抗議と支援の声を上げる私たちです。私たちひとり一人が世界を成り立たせているのですから。
パンシール州のツイッターに、ロバに乗った兄妹の写真が出ていました。
食べているのはりんごです。
「いずれ、この土地はテロリストから解放され、学校は開かれ、私たちの子どもたちは教育を受けられるようになるでしょう」という文章が添えられていました。(ツイートを表示)
首都カブールでは、市場にみかんが並んでいるようです。新年には人々はサンダリ(アフガン式コタツ)に入りながら、家族でみかんを食べるのを楽しみにしていました。そんなささやかな楽しみすら許さないのでしょうか。
きっと、いつかアラーから鉄槌が下ると私は思っています。
2022年3月7日 長倉洋海
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