アフガン情勢に関するメッセージ
2022年2月25日


「今日のメッセージ 2022/2/25」

 2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。「どうして、戦争を起こすのか。人を殺し、多くの人を災禍に巻き込むことになる戦争を」と思うと悲しくなりました。過去の出来事から何も学ばなかったのだろうか。人を殺め、生物の命を奪い、地球を汚し続ける人間の存在を考えるとき、いっそ、地球上から消えた方がいいのではないか、と思うことさえありますが、地上にはまだ「希望」はあるようです。
 ロシアからもアフガニスタンからも、正義を求める人々の姿が届いています。そうした人々と繋がることで、独裁と独善ではない、新たな道が切り開かれていくと信じています。侵攻から一日が経ちましたが、ロシア国内では大規模な反戦デモが起きています。逮捕者は1700人を超えているようです。

★ロシア国内での反戦デモと抗議の声を産経新聞が伝えています。(記事を表示)

★古都サンクトペテルブルクの中心にある広場は、侵攻に反対する人々で埋めつくされています。
(ツイートより

〈古都サンクトペテルブルクの通りいっぱいに平和への祈りを捧げる人々の姿。ツイッターより〉


〈地下鉄構内に避難したウクライナ・ハリコフの人々〉

ロシアのウクライナ侵攻を、「ナチスドイツのポーランド侵攻、フセインのクェート侵攻に次ぐ蛮行だ」と大学教授がコメントしていました。
しかし、忘れてはいけないのは1979年のアフガニスタン侵攻です。
旧ソビエトがアフガニスタンに10万の兵を送り込み、傀儡政権を作りましたが、抵抗が起こり戦争となったのです。死者は160万人を超え、660万人もの人々が難民となりました。ソ連側も14,000の兵士が死亡、その巨大な戦費がソ連邦を疲弊させ、88年(-99年)の撤退を経て、ソ連邦は解体に至りました。ソ連邦のアフガン侵攻がアフガニスタンの悲劇と混乱の源であり、そうした中から過激集団タリバンが生まれたのです。
そうしたことも忘れたのか、プーチン大統領は「自国の安全のため」と嘯きながら、旧ソ連邦の栄光を取り戻そうと侵攻。ウクライナの独立と人々の平和への思いを武力で踏みにじる手法は、アフガニスタン侵攻と変わりません。
 
 インターネットで今回の侵攻の情報を調べていたら、あっ、と思う記事に出会いました。全ロシア将校協会が1月に「ウクライナ侵攻反対」「プーチン辞任」を公然と打ち出していたというのです。(記事を表示

その中で、レオニド・イヴァショフ退役上級大将が「ウクライナは独立国でNATOに加盟する権利がある」「彼らが背いたのは、ロシアの国家モデルが魅力的でなかったからだ」とはっきりと明言していました。私もその通りだと思います。軍内部にもこうした声があることを知って、少しだけ心の霧が晴れたような気持ちになりました。
軍内部には異論があるのに、それを無視しての決行だったのでしょう。そればかりか、国際的な批判に対し「核兵器を使うこともありえる」と発言するに至っては、プーチン大統領は真っ当な精神状態とはいえません。そんな指導者が核のボタンを握っているのです。しかし、ロシア国内のそうした反戦・反大統領の動きを知って、強権政治家プーチンは早晩、力を失うと確信しました。

 アフガニスタンでは、パンシール、カピサ、アンダローブ、バダフシャンで国民抵抗戦線が攻勢を強めています。タリバン側はパンシールに1500名の増援部隊を送り込み、パキスタン軍兵士の支援も得て力で抵抗を封殺しようとしています。抵抗戦線側からの話し合いの提案にも応じず、力で迫るタリバンの姿は今回のプーチン大統領と重なります。平和を願う民衆の姿も見えず、世界の人々、国々の声も聞こうとしないのは全く一緒です。
 戦闘が激しくなり始めたパンシールから脱出しようとする住民を、タリバンがチェックポストを作り押しとどめているという情報が入ってきました。住民を盾にする卑劣な戦法に怒りが湧いてきます。
 そうした強硬策を進めているのは、内務大臣代行のシラジュディン・ハッカニだと思われますが、彼が最近、カンダハールの聴衆の前で演説する映像がツイッターに上がりました。演説の中で彼は、「1500名の自爆攻撃部隊の用意ができている」と語っています。誰に対して、何のために自爆を行うのか・・・。彼が論拠とする「聖戦での名誉ある殉教」は、同じイスラム教徒に対しては認められるものではありません。イスラムの初歩的な解釈さえ履き違えている人が、タリバンの中枢にいることが驚愕そのものです。(ツイートを表示


 写真を見れば分かる通り、ハッカニの演説にたくさんの聴衆が集まっています。きっとロシアではプーチン大統領も、大勢の支持者を路上に繰り出させるかもしれません。
しかし、数は問題ではないのです。
正義と不正義、善と悪、光と闇、どちらを選び、どの側に立つのかを問われているのです。数だとか表面的なことに振り回されていたら、「本来の姿」を見失うかもしれません。
タリバンの教育大臣代行ヌールッラ・ムニールは国際社会からの批判に、「誰の指図も受けない」とNHKのインタビューで答えています。プーチン大統領と同じ唯我独尊ぶりを感じます。(NHK記事を表示

 声を上げ、同じ思いの人と繋がって行く。それがいつか力を増し、「悪」を凌駕していくはずです。ひとつの悪を認めてしまえば、それが「悪の跋扈」に繋がります。ロシアの問題でいえば、クリミア併合を結果的に許したことが、今回のウクライナ侵攻に繋がっています。
中国のチベットやウイグルへの弾圧に黙っていることが、台湾侵攻につながるかもしれません。
パンシールでの弾圧に黙ることが、アフガニスタン、そして世界を闇に追い込むことになると思います。

★カブールから逃れる前に家族と抱擁する写真。「戦争、また戦争」と題されたツイート


★「逃れる前に、涙を流しながらメールを打つウクライナの女性」の写真も投稿された。


 圧政に声を上げる人を見殺しにしてはいけないと思います。どんな形であれ、レジスタンス(抵抗)を続けることが、権力者のやり方を変えさせることになると思います。交渉に応じない相手を変えさせるのは何か、私たちはそれぞれの場で考え、答えを見つけるしかありません。
 アフガニスタンでは、マスードの長男アフマドをリーダーとする国民抵抗戦線が、交渉を呼びかけながらも、それに応えないタリバンとの戦いを続けています。声を上げずに従属の道を選ぶのではなく、自由を掲げ、信じる道を進んだマスードの考えを継承しているのだと思います。

★山岳地帯でタリバン側のヘリコプターに銃を撃つ抵抗戦線の戦士(ツイートを表示


パンシールは「自由へのシンボル」だ、というツイートがありました。


マスードとアフマドが並び、差す指先に平和のシンボルである白い鳩が描いたイラストも投稿されています。


 「平和と正義」のために、私も世界の人々と一緒に声を上げていきたいと思います。
それだけが「悪の独裁」に立ち向かえる手段だと、信じているからです。

      2022年2月25日 長倉洋海


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