アフガン情勢に関するメッセージ
2022年1月21日


「今日のメッセージ 2022/1/21」

 タリバンが2840人の戦闘員を解雇したというニュースをAFP通信が伝えている。「不正行為があったためだ」というが、解雇した戦闘員から銃を取り上げただろうか。もしそうしていないなら、彼らが夜盗化し、前にも増して危険極まりないと思う。しかし、これは見せしめ的解雇で、本当に不正行為で逮捕していたら、こんな数では済まないだろう。
(時事ドットコムニュースを表示

 そんな心配を象徴するような映像がAamaj Newsのツイッターで流された。「タリバンが家に押し入ろうとした」と証言し、恐怖におびえ切った女性活動家の生々しい映像だ。タリバンのスポークスマンは「海外に逃れるための演技だ」とコメントしているが、この表情が演技かどうか皆さんの判断にお任せしたい。(ツイートを表示

北部マザリシャリフでは、やはりタリバンを批判していた活動家が「暗殺された」と言うツイートが彼女の写真と共に上がっている。タリバンがこれを否定するなら彼女の生きている姿を見せなくてはならないだろう。(ツイートを表示


ジャーナリストへの暴行も依然、続いている。 

★KhawarTVの記者兼元ディレクターが夜間に何者かに襲われ暴行を受けた、という投稿。
      (↓クリックで表示)


 先日、北部ファリヤーブ州の都市でウズベキ人タリバンがパシュトゥーン人タリバンを武装解除したというニュースをお知らせしたが、タリバンはこれに「交渉団を送った」と説明。しかし、これが交渉団だろうか。大兵力と装甲車で威圧するように市内を行進する映像が公開されている。(ツイートを表示

★AFP通信では以下のように伝えている。(AFPニュースを表示

★他に、米軍が残していった装甲車や装備を訓練の様子とともに公開する映像もある。
 (ツイートを表示

 その一方で、アフガニスタン国内は経済も医療も崩壊している。タハール州の病院スタッフが「6ヶ月給与がなく、空腹で働くことができない」と窮状を訴えている。(ツイートを表示


このように国家をまともに運営することができてないのに、「国際承認の条件は全て整っている」と言うタリバン当局者。(記事を表示


しかし、一番にタリバン外交団を受け入れ、ウイグル族への苛烈な弾圧を行っているあの中国ですら、承認をためらい、包括政権を作るべきだと述べている。(ツイートを表示

イランのアフマドネジャド元大統領も警鐘を鳴らす。「タリバンは世界への深刻な脅威だ。中国、ロシア、パキスタンはタリバン支援を悔いることになるだろう」とAamaj Newsのインタビューで語った。
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 EUがアフガニスタンへ教育支援、生活支援のために348億円の援助を行う計画があるというニュースが今日、流れた。(↓クリックでNHKニュースを表示)


子供たちの栄養不足を補うための学校での給食や、学校が再開できるよう教員への給与などにも使われるとのことで、国際機関を通して行なう計画だそうだ。タリバンに援助品や現金を渡すと、彼らが中抜き、あるいは全てを自分たちのために使ってしまう可能性がある。それを防ぐためにも、タリバンではなく、国際機関を通して必要としている人々や子どもたちに現金や食べ物が届いてほしいと願う。タリバンの教育大臣が早速「支援に感謝する」と述べているが、支援は彼らのためではないから、「お礼」ではなく、「現在に至ったことへの謝罪」を述べて欲しい。

 教育現場の混乱は、多くの学生に絶望感を与えている。私たちが支援する「山の学校」の卒業生で遠くの大学に通う男子学生は『まだ学校が始まっていません。教員が国外に逃れてしまったせいです。大学の免許が取り消されてしまうのではという噂もあり、とても心配です』とメールで伝えてきた。大学をマドラサ(イスラム神学校)に改組するのではないか、という情報もあって先行きは見えない。以前、パンシール大学が燃やされたことはお伝えしたが、燃えてしまったイスや机を見ると、心が痛む。

〈焼け落ちたパンシール大学の学舎〉

 国内で続く女性たちの抗議、そしてNRF国民抵抗戦線のレジスタンス。
先日のメッセージで、イランで抵抗戦線のリーダー、アフマド・マスードと会談したタリバンのムッタキ外相代行は「いつでも帰ってきていいのです、安全を保証します」と言った、とお伝えした。それに対し、抵抗戦線の外交代表のアリ・ナザリーは「自分の国に帰るのに許可はいらない」と話した。  (↓クリックでツイート表示)


★過酷な状況だが、抵抗戦線は反攻を始め、少しずつ地域を取り戻しているようだ。
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★山岳地帯で耐える抵抗戦線の戦士は、いつか故郷を奪い返すことが過酷な戦いの支えになっている。(ツイートを表示

都市の女性たちも屈しない。
タリバン兵に催涙ガスや電気ショックをかけられても抗議を続けている。
(↓クリックでツイートを表示)


★アフガニスタンの女性への弾圧を描いたイラストがツイッターに投稿されていた。女性たちの思いが込められたイラストだと思った。(↓クリックでツイートを表示)


人が生きるためには「希望」が必要だ。学校が好きだった少女にとっては「学校で学ぶこと」だった。
女子は学校に行けない”という動画で「私は一日中学校やコースで過ごし、いつも指のどこかにペンを持っていた女の子でしたが、カブールの陥落で私の夢はすべて落ちました。」と話す女子生徒。(ツイートを表示

 タリバンがアフガニスタンをモノトーンに染めようとしても、人々は抵抗する。わずかな希望を見つけて闘いを続ける。その光がどんなに小さくても、私たちはそれを感じることはできる。光を感じることができれば、私だったら、それを写真に撮ることができる。現地にいなくても日本で見ることができる写真や映像から「人々の思い」をすくい取ることができる。それができればアフガニスタンは決して遠い国ではないと思う。

   2022年1月21日 長倉洋海


〈白雪のヒンズークシ山脈とマスードの廟〉(Twitterより)



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