アフガン情勢に関するメッセージ
2021年12月8日


「今日のメッセージ 2021/12/8」

 アフガニスタンでは今日もさまざまなことが起きている。国際ニュースとして伝えられることもあれば、報じられないことも。経済崩壊、政治の混乱、食糧不足・・・。深刻な問題が少しでも改善されるように祈るばかりだ。
 そうした中で、アフガニスタンの女性活動家・ジャーナリストであるマブーバ・セラジさんの言葉に深く共感した。彼女はBBCのインタビュー番組で「タリバンに国を良くする気があるのか」と強く問いかけている。「シャリア(イスラム法)が一部の人の解釈で成り立ってはならないということ。私たちは元気で美しく成功しているイスラム教の国になりたいのです」と話す言葉には強い説得力がある。(「アフガニスタンは大変なことになっている」カブールに残る女性権利活動家 - Yahoo - BBC News)

同じく、BBCのインタビューにタリバンの中の最強硬派、ハッカニ・ネットワークの最高幹部の1人であるアナス・ハッカニが登場している。
「私たちはモンスターとして描かれているがそれは違う。国際社会はアフガニスタンは欧米とは違うということを受け入れるべきだ。アフガニスタンは100年以上も外国の侵略を受け、その思想も押し付けられてきた。その間、どの政府がどれも続かなかったのは、国民の性向に合致していなかったからだ。教育も女性の権利も、私たちの文化、宗教、信条に沿って行われるべきだ。いま教育などで遅れがあるのは新しい憲法が制定されていないため、まだ政策が決まっていないからだ」と述べている。(BBC記者のツイートより

  どんな国を作ろうとして権力を奪取したのか・・・。それが不明瞭なまま、タリバンは国際承認を迫っている。彼らはシャリアに基づく国づくりというが、選挙も行わず、他の勢力の声を聞こうともせず、自分たちのイスラム解釈だけで強行突破を図ろうとしているのだ。それでは、セラジ女史が述べているように「アフガニスタンは粉々になって崩壊する」のではないだろうか。国の「政府」ならば、どんな思想、宗教であれ、国民の幸せを第一に考えるべきなのは言を俟たないだろう。国民の苦境よりもシャリア解釈を第一にしているのが現在のタリバンだ。

★子どもたちの置かれた苦難を封じるNHKニュース

「子どもたちがひどい栄養失調」アフガン食糧難 NGOが支援呼びかけ - NHK Web

★「国外脱出する国民、後を絶たず」と伝えるAP通信
(「タリバン 政権誕生から3ヶ月...」 AP通信)

★「タリバンが投降したアフガン治安要員47人を即決処刑」とAFPが報じる
「タリバン、元治安要員処刑か 日米欧が避難」- AFP通信)

★「学校やメディアでの規制を強めるタリバン」(N H K)
「タリバン 学校教育やメディアへ統制強化 国際社会で懸念深まる」 - NHK Web)

★チャドル姿でタリバンに抗議する女性(ツイートを表示

★「学校で学びたい」と話す少女(ツイートを表示

各地の女性デモ(ツイッターから写真のみ)の映像


 こうした各地の動きにあまり触れることなく、「タリバンも普通の人で活動に便宜を図ってくれる」と話したり、「タリバンが政府となった方が、この地域全体が安定し日本の国益にかなう」となどという人の声が日本のメディアに登場するたびに、この人たちはどこを見ているのだろうと思ってしまう。タリバンが権力を握ったことで国家が危機的な状況となり、それを改善できる見込みがない現実を見ていないのではないか。こうした状況下では国外に逃れた人々が戻ってくる可能性はないだろう。

 では、どうしたらいいのだろうか。頑なにイスラム法の遵守を叫ぶタリバンを譲歩させることができるのは、世界のイスラム教徒たちの声ではないだろうか。まもなく、アフガニスタン問題を議題としてイスラム協力機構(Organisation of Islamic Cooperation。57ケ国が加盟)の臨時会議が開かれようとしている。
あまりに遅い開催だが、それでも、アフガニスタンの置かれた状況が少しでも改善することを祈りながら注視したい。


2021年12月8日 長倉洋海


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