「今日のメッセージ 2021/10/8」
アフガニスタンには冬が近づいています。タリバンとNRF(国民抵抗戦線)との戦いに、少しずつ変化が見えます。抵抗戦線の攻撃を受けるタリバン側から、死傷者ばかりか投降者が増えているのです。自分の郷里ではない場所で、どこから襲われるかわからない恐怖を抱えて戦っている結果だと思います。
一方、抵抗戦線のリーダー、アフマドは、ロンドン・ケンブリッジ大学での「マスード・シンポジウム」にオンラインで参加するなどして、健在ぶりを見せています。父親のマスードは「隷属するくらいなら、私は死を選ぶ」と語っていましたが、アフマドも「私たち家族には『降伏』という文字はない」と最近述べています。
タリバンの捕虜たち↓
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抵抗戦線の広報官アリ・ナザリーも奮闘しています。滞在地の米国からパリに飛び、政界指導者たちと精力的に会見を行い、「支援の確約」を取り付けるなど前向きな言葉を引き出しています。
北部では各地のリーダーたちの抵抗戦線への合流も始まっています。1万人が合流したという情報もあります。もちろん、その中には機を見るに敏な人間も多く含まれているはずですが、そうした人たちがアフマド側に就き始めたということが重要なのです。国民を思う気持ちはもちろん、行政能力もなく、国際的な承認も得られないタリバンに見切りをつけた可能性が高いからです。
★抵抗戦線、カブール15キロのところまで迫る
★ナザリーのフランス国会議員との会談(ツイート1、ツイート2)
★仏大統領マクロンの声明
大国ロシアの動きも変わり始めています。タリバンを認める姿勢から、「承認は議題にない」と転じ、数日前には米国に「過激派攻撃のための中央アジア内にあるロシア軍基地使用を認める提案をした」というのです。その流れからいうと、対タリバンへの交渉カードを増やすために、今まで抑えていたタジキスタンの抵抗戦線側への支援を認めるかもしれません。そうなると北部一帯の抵抗戦線側への補給路が確保されます。そこから米国、欧米、インド、イランなどの物資支援が入ってくるかもしれません。
米国に基地使用を呼びかけたとされる報道
そうしたパワーゲームの中で、アフマドには飲み込まれないためのリーダーとしての舵取りが必要となります。12歳で父を失くしたアフマドですが、父親のことを懸命に学び、その全てを吸収しようとしてきたに違いありません。もちろん、真のリーダーになるためには人々の支援と信頼が必要です。リーダーがしっかりしていることで兵士たちが付き従い、国民は信頼します。一方のタリバンには、「全体のリーダー」が見えません。今までは下部のタリバン兵は各派閥のリーダーに従うだけで良かったのでしょうが、今そのリーダー達が一枚岩ではない。
> 「タリバン」がどんな国を作るのか、そして何を為そうとしているのかが全く見えないため、下の者達も従うべきところを見失っているのだと思います。そして、そのような明確な指針のないグループの下で生きるということは、逆に言えば「自分の近くにいるタリバン兵がどのような判断で何をするか」に任されるということであり、暗黒そのものです。
しかし、どんな勢力を支持するかは国民です。武力ではなく、話し合いで、そして、でき得るなら国際監視団の元での選挙で、アフガニスタンの未来が決まっていくことを私は心から願っています。
2021年10月8日 長倉洋海
★「私には大統領になる夢があった」と話す女性
★無実の人を殺していると村人が非難
★ハザラの人々は立ち退きを命じられた
★13人ではない。数百人が殺された
★就学と雇用を求める女性たち
〈「教育と仕事は私たちのイスラムの権利です。」 「教師の日」である今日この機会に、アフガニスタン女性統一連帯グループは「教育と仕事」をスローガンに、抗議集会で学校や大学の開設と女性の雇用を呼びかけた。〉
★モスクへの自爆テロ
★「餓死かタリバンに殺されるか」 生活が困窮している
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