アフガン情勢に関する緊急メッセージ
2021年9月28日


「今日のメッセージ 2021/9/28」

                          (※今日から「緊急」を外します)

 アフガニスタンではタリバンの蛮行が今日も続いています。中でも、ハザラの人々への民族浄化とも思える殺害と家屋の破壊、追い立てなどが頻発しています。首都でのタジク人狩りは続き、処刑された人の街頭での見せしめもあります。
 隣国パキスタンのカーン首相や中東の友好国カタールの外務大臣は「時間が必要だ。見守るべきで、いずれタリバンも変わるはずだ」と言っていますが、彼らの本質は20年前と同じで、今もきっとこれからも変わらないでしょう。価値観が同じか近ければ話し合いも交渉も可能でしょうが、他者の価値観を認めず武力で排除していく勢力と世界はどう折り合いをつけるのでしょうか。

<ハザラ人の家が壊されていく>
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  タリバンは選挙にも応じていません。中東のドーハのテレビ局NRFarabiaのニュース番組で「国民の支持があるというなら、どうして選挙をしないのですか」とキャスターに問われ、返事ができずしどろもどろになっている広報官の様子が映し出されました。
<どうして選挙に応じないのか>

 国民が飢え苦しんでいるのに何の援助も行わないのはどうしてでしょうか。首都の多数派はタジクとハザラですから、彼らは苦しんでもいいと考えているのでしょうか。タリバン兵は給料をもらっているのに、イスラムの困った人を助ける喜捨の精神を持ち合わせていないのでしょうか。
何のために権力を握り、どんな政府になろうとしているのでしょうか。
いずれにしても、どんな政体も、国民の声を聞くことなしには成り立たないはずです。それがない政体は、唯我独尊の武装勢力にしかすぎません。
<ヘラートの見せしめ>(※閲覧注意)
<パンを盗んだため晒し者に>

 そんなタリバンの中で、いま内部で闘争が激化しています。パンシールのNRF(国民抵抗戦線)と交渉をしようとした穏健派は殺害・排除され、数々のテロを実行して来た最強硬派のハッカーニネットワークが力を強めています。欧米を敵視するアルカイダも同様に発言力を増しています。タリバン強硬派とISホラサン州にも強い影響力を持つと言われるパキスタンは、カブールに軍統合情報局局長を乗り込ませ、組閣に対して指示し、タリバンのパンシール攻撃を支援するための航空機派遣や軍事顧問の派遣など、軍事介入も強めています。早晩、タリバンはハッカーニグループに乗っ取られ、さらに世界と対峙するかもしれません。
<パキスタン、ハーン首相のタリバン擁護>
<アフガニスタンからヘロインの密輸>

 一方で、やっとタリバンの蛮行に対する動きが出ました。国際刑事裁判所のカーン主任検察官が、タリバンとイスラム国ホラサン州の戦争犯罪の本格捜査再開の承認申請をした、とのニュースがありました。過激な武装集団タリバンの犯罪は国際法によって裁かれるべきです。
しかし、その前にまず、蛮行を止めさせることが緊急ですが、日本と世界からアフガニスタンのニュースは減ってきています。
<国際刑事裁判所にタリバンに戦争犯罪を申請>

 次々と入れ替わっていくのがニュースなのでしょうが、それに流され自分たち以外の世界への関心を失って行けば、私たちの心も劣化し、壊れていくような気がしてなりません。

  2021年9月28日  長倉洋海




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