「現地の状況について2」
この一両日でタリバンは政府閣僚を発表するようです。しかし、ガニ政権の第一副大統領だったアマヌラー・サーレこそが憲法上は継承者で、彼の元でタリバンも加わった選挙が行われるべきです。しかし、国土の9割を武力で制圧し首都も押さえたタリバンが力で押し切ろうとしています。
またパンシールに入ろうと攻撃をかけ、戦いが熾烈になっています。その両者の間で激戦が展開されています。渓谷の入り口と北の入り口に迫ったタリバンはチャリカールまで押し戻されましたが、タリバン側は百人以上の死者を出し、パキスタン人の捕虜も多数捕まったことがSNSで伝えられています。しかし、NRF(National Resistance Front:国民抵抗戦線)側も十数人の死者を出しています。パンシールの戦いで子ども1人が亡くなったとも聞きました。
どうしたら血を流さなくて済むのでしょうか。かつて、「あなたの勝利とは?」と質問した私にマスードは「当事者たちが戦いでは解決しないということを知り、武器を置き、話し合いをして国民の声を聞く。それが私にとっての最大の勝利です」と答えました。しかし、一方が対話を拒否し攻撃してきた時は彼は断固と戦ってきました。いま、アフマドが置かれた状況も当時と酷似しています。タリバン側が抵抗戦線側に勝利できないと悟り、交渉につくことが私にとっての一縷の望みです。これ以上の死傷者が出ないことを切に願うばかりです。
パンシールでは攻撃を続けながら、首都ではタリバンのパレードが行われ国営テレビで放送されたそうです。行進の車列には武器ばかりでなく、自爆攻撃員が登場し、爆弾が入った自爆ベルトや爆発用の燃料が入ったタンクとともに映っていました。誇らしげにテロ攻撃を礼賛する姿勢に空恐ろしさを感じました。こんな人たちが政権を握ろうとしているのです。
一方、故郷のパンシール渓谷を守ろうと戦いを続けるNRFのリーダー、アフマド・マスードは最近のインタビューでこう答えています。
「私は国民のために戦うことを決意しました。
以前、ガニ政権から何度も重要なポストを与えるから政権に加わるように誘われましたが、私は国民を犠牲にした政権に加わるつもりはありませんでした。
脱出してエーゲ海を小舟で漂ったり、飛行機につかまって落ちた若者もいました。
人々をそのように追い込む国家ではなく、国民の自由と幸せにする国を作りたいのです」。
アフガニスタンが平和になりますように。でも、そこまでには苦難が続きそうです。が、「アフガニスタンは必ず平和になる」―。そのマスードの言葉を心の支えにして、今後の状況を見守りたいと思います。
9月3日 長倉洋海
インタビューに応じるアフマド・マスード
タリバンのパレードを伝える(動画入り)ツイート
自爆ベスト(動画より)
携帯用の爆弾(動画より)
自爆用のポリタンも行進の車列の中に(動画より)
また、米CNNやフジテレビでもパンシールの戦闘が報じられています。
- 「パンジシールで戦闘再開、タリバンに抵抗の最後の州」(CNN.jp)
- 「タリバンと抵抗勢力 アフガンで戦闘再開」(Yahoo-FNNプライムオンライン)
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